米大リーグのオークランド・アスレチックスが9日、都内で初となる投手限定の入団テストを行った。会場の室内練習場には28選手が集合。午前9時から順次ブルペンでピッチングを行い、スカウト部門で統括的立場のスティーブ・シャープ氏、環太平洋担当スカウトのアダム・ヒスロップの両氏が、スピードガンを手に見入った。

日本でメジャーのチームが投手限定で入団テストする理由を、シャープ氏はシンプルに説明した。「世界で最もレベルが高いのはアメリカ、ベネズエラ、ジャパン。どういうプロセスをたどるかは別に、私たちはメジャーで通用するピッチャーを探してます。何人かのサプライズはあったよ」。

日本担当スカウト3年目の富塚俊幸氏が、背景をさらに詳しく説明してくれた。「日本では大学進学か、社会人、もしくはプロに進めない選手は18歳で投手をあきらめてしまう現実があります。ふるいとして、その目は粗すぎますね。だから、会社員を続けながらでも、投手としての夢を追える機会を設けたかったんです」。

NPB、アマチュア球界とのトラブルは絶対に避けたい。極力調査をして、フリーの立場を確認するが、夢を追いたいがあまり、選手が真実を言わないケースも想定しないといけない。必然的に個人情報管理は厳しくするしかない。富塚氏は「我々に日本球界の秩序を荒らす意図はありません」と慎重に言葉を選んだ。

今回の28選手から、契約に向けた交渉に進む選手が出てくる可能性はあるが、スムーズに事が運ぶかは不透明。まず、最初のステップに意義がある。

受験条件は<1>現在NPB球団に所属していない<2>球速144キロ以上の投手。何らかの理由で投手をあきらめた選手の中には、クリアする選手はある程度はいる。それは予想できても、いざヒスロップ氏が「アメージング」と息をのむシーンに接すると、埋もれた逸材の発掘か! と胸は高鳴る。

ふるいからこぼれた素材にメジャーが目を向ける時代に入った。それは選手にとって大いなる励みになる。【井上真】