【アナハイム(米カリフォルニア州)29日(日本時間30日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、芸術的な今季1号本塁打を放った。「4番DH」で出場したマリナーズ戦の4回無死一、二塁、内角低めの完全なボール球を右中間スタンドまで運んだ。地面から1・21フィート(約36・9センチ)のカーブを拾い上げた3ランは、メジャー移籍後のフェンスオーバーで最も低いボール。まずは打撃で3年目の進化を見せた。

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地面まであと36・9センチに沈んだ白球を、23メートル上空にかち上げた。4番大谷は4回無死一、二塁、2ストライクからの3球目、内角低めの完全なボール球にバットを下から潜らせた。「上がった瞬間は、いくと思いました」。一時は逆転となる3ラン。地元テレビ局のリポーターも「ゴルフみたい!」と興奮気味に表現する芸術的な一撃だった。

打者の感覚は確実に上がっている。「徐々にですけど、距離感とか、いいかなと思います」。内角低めに食い込む右投手のカーブに対し、ポイントを前に設定し、体の内側からバットを絞り出し、スタンドまで運んだ。

ボールとの距離感が、完璧に一致していた。打撃上向きの傾向はあった。選手の見極めに定評のあるマドン監督は試合前、以前の大谷の状態を「体を回転させてしまっていた」とスイングが外回りだったと指摘。「弓矢で言えば、後ろに引いて、真っすぐ放つ。そうすれば内角に対応できる。昨日のセンターへの打球は良かった」と話し、前日に放った右中間二塁打に上昇のにおいを感じていた。

状態の良さも加わった。昨年は9月中旬に手術した左膝の痛みを我慢しながら打者に専念。2週間に1度程度の痛み止め注射でしのいでいたが「加重のしにくさ、蹴りのしにくさはある」と明かしていた。今季は左膝の影響を感じさせず、走塁でも一塁への駆け抜けで持ち前の快足を見せるなど、万全で臨めている。

ボール球を本塁打としても「甘い球をしっかり打つというのが理想的。2ストライクからああいう球を打てるっていうのがあるだけで、また配球も変わる」と原点の好球必打を課題とした。5打数1安打も2試合連続の打点。潜り込んで打ち上げた1本は巻き返しののろしだ。

○…試合前の練習では、ゴルフではなくサッカーで運動神経の良さを示した。投手陣のウオーミングアップでサッカーボールを使用。水原通訳と蹴り合い、体を動かした。時折リフティングでボールを操り、頭の後ろに乗せるなどの技も披露。その後は約20~25メートルの距離でキャッチボールを行い、8月2日のアストロズ戦登板へ向け調整を行った。