体は熱くても、頭は冷静だった。6回、詰まった当たりの連打で無死一、二塁のピンチを迎えたマリナーズ菊池雄星投手(29)は、25日の今季初登板で4回途中KOされた光景を思い起こしていた。

「前回は自滅というか、修正できないうちに終わってしまった」。5回までアスレチックス打線をボテボテの内野安打1本だけ。球威への信頼は変わっていなかった。「気持ちを出して、アグレッシブに、点を与えないという気持ちで投げました」。

後続を150キロの高速スライダー、155キロの速球で連続空振り三振。最後は高速スライダーで三ゴロに仕留めると、無観客の静寂の中で、力強く両拳を握りしめた。

全89球に“ニュー雄星”の魅力が詰まっていた。最速は97マイル(約156キロ)。高速スライダーは151キロ、カーブも138キロを計測した。昨オフ、専門チームの協力を得てデータ分析と並行しながらフォーム改良に着手した。テーマは、速球の球速アップと決め球スライダーの向上だった。その結果、全球種が平均5キロ前後アップした。「オフにやってきたことを表現できたと思います」。昨季4試合で0勝2敗と未勝利だったア軍打線に、三塁すら踏ませなかった事実が、進化した証拠だった。

救援陣が同点に追い付かれ、菊池の今季初勝利は消えたが、サービス監督は興奮気味に言った。「すばらしかった。過去ベストの登板だった。球種だけでなく、何よりも闘争心があった」。先発投手にとって勝敗は時の運。「これがスタート。もっといい投球ができると、自分に期待しています」。本格化した菊池の2年目が60試合で終わるのはもったいない。