カブスのダルビッシュ有投手(34)が29日(日本時間30日)、レッズ戦に6回7安打無失点8奪三振と力投し、メジャートップタイとなる今季6勝目(1敗)を挙げた。レ軍秋山翔吾外野手(32)とのメジャー初対決は、2打数1安打と打撃妨害だった。6戦連続クオリティースタート(6回以上、自責3以下)で6連勝。防御率はリーグ2位の1・47と、サイ・ヤング賞候補の最右翼に浮上してきた。日刊スポーツ評論家の上原浩治氏(45)は、スライダー、カットボールに好調の理由を見た。

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開幕から好調のダルビッシュが、予想通りのピッチングを見せた。昨年の後半戦を見たとき「今季のダルビッシュは相当な活躍をする」と自分のYouTube(上原浩治の“雑談魂”)でも紹介していたが、その通りの結果が続いている。根拠を評論してみようと思う。

これまでのダルビッシュのイメージを話しておきたい。150キロ台後半の真っすぐを投げ、多彩な変化球も持っている。それだけでも、好投手の条件を十分に備えているが、コントロールもいい。立ち上がりさえすんなりいけば、大きく崩れる心配はほとんどないピッチャーだった。さらに昨年の後半戦は、多少の心配があった立ち上がりも、安定感が増していた。これが今季の活躍を予感させる根拠だった。

立ち上がりが改善された一番の要因は、自分の信頼するボールを確立したことだろう。ダルビッシュでいえば、カットボールとスライダー。初回を3者凡退で打ち取ったが、ファーストストライクはカットボールかスライダーで取っている。真っすぐは3球だけ。先頭打者をレフトフライに打ち取った球はストライクゾーンだったが、あとの2球はどちらも少し抜け気味のボール球。引っ掛けて甘いコースにいかないように気を付けて投げているようだった。

カットボールもスライダーも同じ“曲がり球”だが、キレもコントロールもいいから、カウント球と勝負球で使い分けられる。一般的な概念だと、変化球は威力のある真っすぐがあって生きるとされているが、ダルビッシュの曲がり球は、その常識を超えている。同じ曲がり球でも、微妙に違うスピードと曲がり幅を正確なコントロールによって使い分けている。絶対的な自信もついたのだろう。だから立ち上がりの不安もなくなったのだと思う。

初回以外はすべて走者を背負ってのピッチングだったが、本当に「危ないかな」と思ったのは5回だけだった。先頭打者から2本連続でヒットを打たれ、打者は3番の左打者・ウインカー。カウント1-1からの3球目は、捕手が高めのボールゾーンに要求したがすっぽ抜け。外角へのボール気味の球だったが、球審はストライクと判定した。

次の球は内角低めに決まって見逃し三振で、打者はベンチに引き揚げる際、球審に文句を言っていた。これが助かった。2死満塁からは初球のスライダーを打ってボテボテのサードゴロで無得点。これでダルビッシュの6連勝は決まった。

今後に向けて、まだまだ上がり目もある。これまでの課題でもあったが、150キロ台後半の真っすぐのコントロールがよくなれば、手がつけられないピッチャーになる。まだ、力を入れて真っすぐを投げると、引っ掛けたり、すっぽ抜けたりするときがある。この真っすぐの精度が上がれば、自由自在に扱える2つの曲がり球は、さらに威力を増す。そうなれば「世界一の投手」も見えてくる。(日刊スポーツ評論家)