2月中旬から予定されているMLBの春季キャンプに関して、15球団が練習施設を置くアリゾナ州の「カクタス・リーグ」が延期を要望していることが25日(日本時間26日)、明らかになった。米国の一部メディアが伝えた。キャンプ施設があるフェニックス、スコッツデールなど各市の市長らがMLB宛てに連名で要望書を提出。今後は選手会を含めた折衝次第だが、キャンプインのみならず、4月1日の開幕へ、あらためて不透明な状況が浮き彫りとなった。

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想定の範囲内とはいえ、今季のメジャー公式戦開催の雲行きが怪しくなってきた。15球団(10カ所)がキャンプ施設を置くアリゾナ州の「カクタス・リーグ」が、この日までに9地区の市長らとの連名で、MLB機構のマンフレッド・コミッショナー宛てに、春季キャンプ延期を求める要望書を提出したことが、明らかになった。時期は未定ながら3月以降と見込まれており、要望通りであれば、4月1日の開幕日も先送りされる可能性が出てきた。

米国では依然として新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、アリゾナ州では新たな感染者が1日5000人を超えているだけでなく、感染率が最も高い状況。選手や家族、関係者だけでなく、ファンを含めると数万人の来州が予想され、地元住民へのリスクも高いため、各市長らが延期要請を決議した。

その一方で、要望書がMLB選手会に直接届いていなかったことで、新たな物議を醸すことになった。この日、文書を入手した一部メディアが公開。選手会側は“寝耳に水”だったこともあり、機構側が意図的にリークしたのではないかとの臆測が出始め、態度を硬化させた。今回の文書はあくまでも要望のレベルであり、機構側が一方的に決定できるものではない。最終的にはオーナー側と選手会の合意が必要なため、現時点では「2月中旬キャンプイン、4月1日開幕」の予定は変わっていない。

ただ、オーナー陣の一部がワクチン接種が進む5月中旬まで公式戦の開幕を延期したい意向を持っており、今回の“リーク”がそのための布石と推測された。開幕延期となれば選手の年俸は試合数に準じて減額されるため、選手会にとって全162試合の実施は大前提。行政による今回の要望書を選手会側が「圧力」と受け取る裏に、オーナー側への不信感があることは否定できない。

昨季公式戦が60試合に短縮された際には、年俸配分問題などで両者の交渉は泥沼化。今季も収入増となるプレーオフ枠拡大を望むオーナー側と両リーグでのDH導入を主張する選手会で駆け引きが続いている。

日本のような非常事態宣言の有無にかかわらず、行動規範が曖昧な米国。例年通りのキャンプ実施を願う一方で、健康・安全面からも、現状では無理と言わざるを得ない。

◆昨季のMLBキャンプ 2月13日前後にバッテリー練習が始まり、同18日前後に野手の練習が開始。26日前後からオープン戦が始まり、当初は順調に日程を消化していたが、3月12日、大リーグ機構が新型コロナウイルス感染拡大により残りのオープン戦全試合を中止すると発表した。球団によっては、その後もキャンプ地に残り自主練習を続ける選手がおり、菊池が所属するマリナーズも同月15日はその方針を打ち出した。だがその翌日には政府の方針に従い自主練習を中止し、施設閉鎖。キャンプが再開したのは7月だった。