エンゼルス大谷翔平投手(26)が、メジャーで自己最速となる101・9マイル(約164キロ)をマークした。右肘の手術前、18年5月30日のタイガース戦で計測した101・1マイル(約162・7キロ)を上回った。

日本ハム時代の2016年10月16日には、パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナル第5戦で165キロをマークしている。自身の持つ日本最速記録を更新した当時の記事を復刻します。(所属、年齢など当時)

  ◇   ◇

怪物がまた偉業を成し遂げた。日本ハム大谷翔平投手(22)が16日、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦に「3番・DH」で出場。7回に4打席目を終えると、3点リードの9回に登板し、自身の持つプロ野球最速を更新する165キロを連発して3者凡退に抑えた。野手で先発した選手がセーブを挙げたのはプロ野球史上初。チームも7-4で逆転勝ちして対戦成績を3勝2敗とし、リーグ優勝による1勝のアドバンテージを加えて4年ぶり7度目の日本シリーズ進出を決めた。

隣席の声すら聞こえない。“守護神”の登場に、スタンドには地響きが波打った。3点リードの9回。大谷が、マウンドに立った。「すごくいい雰囲気でマウンドに上げさせてもらいました。それでいいパフォーマンスが出せたと思う」。DHを解除し、リリーフする。歴史の扉をまたひとつ開いた。だが、本編はここから。1球ごとに、歓声はボリュームを上げていった。

先頭・松田への初球が163キロを計測。CS突破へのカウントダウンと相まって、球場は異様なムードに包まれる。そして続く吉村への初球が、日本最速記録を更新する165キロ。「1イニングですし…。(感覚は)特に変わらなかったです」。高校時代から目標としていた境地に到達しても感慨はないが、「(球速を)安定して出せれば、ほぼほぼファウル。そうすれば変化球で三振が取れる」と手応えはつかんだ。165キロは全3球。この日投じた8球の直球はすべて163キロ以上、フォークも151キロの異次元の速さだった。

4回表終了時、大谷はロッカー室にいた。栗山監督の“夢プラン”を伝えようと近づいてきた厚沢ベンチコーチに向かって、声を掛けられるよりも先に、こう言った。「行きましょうか?」。先発の加藤が1回で降板する展開。「序盤から投手も使っていたし、あるかもしれないとは思っていました」。指揮官の思考を読み、心では覚悟もしていた。ブルペンに移動し、少しずつキャッチボールを開始。7回の4打席目を終えると、捕手を座らせ、本格的に準備を進めた。

マンガのようなシナリオも、好循環を生む要素になった。通常はダッシュなど、瞬発系のトレーニングで体に刺激を与えてから登板に備える。「DHで出てたことが、逆によかった。ベースランニングで走ってもいたので、不安なく入れました」。内野安打で出塁した5回は、近藤の二塁打で生還。体を作り上げる必要がなく、投手としてもスムーズに試合と向き合えた。

さあ、日本シリーズだ。「(マツダは)きれいな球場で、個人的には好き。厳しい戦いが続いていくと思うけど、みんなで今日みたいな試合をして、日本一になれればいいです」。野球ファンをワクワクさせる最高のストーリーを描いてみせる。【本間翼】