ジャイアンツのアシスタントコーチに就任した植松泰良(たいら)氏(38)が、日刊スポーツの電話インタビューに応じ、新役職への抱負を語った。千葉県出身の植松氏は、ジ軍マイナーのインターンからスタートし、1年後の07年からメジャーのブルペン捕手を務め、右腕リンスカム(元エンゼルス)や左腕バムガーナー(現ダイヤモンドバックス)らエース級の球を受け続けてきた。3回のワールドシリーズ制覇を陰で支えるなど、ジ軍一筋14年での堅実な働きぶりが認められ、日本人初の常勤コーチに抜てきされた。

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過去14年間、裏方として選手やスタッフらと誠実に接し、目立つことのないサポート役に徹してきた植松氏の姿勢が、指導者への道を開くこととなった。

「これまでの監督、コーチ陣のサポートのおかげだと思っています。彼らがみんな良くしてくれましたし、いろんなことをやってきた積み重ねなので、感謝の気持ちしかないです」

これまではブルペン捕手の立場で、試合前の練習からコーチや選手を支えてきた。大学で運動学を専攻したこともあり、かつてはトレーニング関連やトレーナーの役割も考慮していたが、最近数年はコーチ陣のサポートを務める機会が増え、指導者への興味を持ち始めていた。来季からは、主に打撃コーチの補佐役として、練習だけでなく、打撃データの集積、対戦相手の研究などの役割も担うことになる。

「野球はおもしろいもので、たとえいい選手が集まっていれば勝てるわけでもない。そういうところで、コーチに興味を持つようになりました」

実際、今季の開幕前はドジャース、パドレスの2強と予想されていたが、下馬評の低かったジ軍がメジャー最多の107勝を挙げて地区優勝を飾った。フロント陣が主導するデータ重視のスタイルに、19年で勇退した通算2003勝の名将ボウチー監督が浸透させた堅実な野球を融合。就任2年目で結果を残したキャプラー監督(元巨人)をはじめ、コーチ陣の手腕と統率力は、メジャー球界でも高く評価されており、来季からは植松氏もその一員となる。

「データだけに偏るのではなく、オールドスクールのスタイルとミックスしてバランスを取ることが大事だと思います。やりがいがありますし、やっていて楽しい。ただ、すごく責任も感じています」

オフに入ったとはいえ、すでに監督、コーチ陣との間ではオンラインでのミーティングを繰り返すなど、来季への準備も始まった。ナ・リーグ西地区は、来季22年も激戦は必至。植松新コーチにとって、新たな野球人生がスタートする。【取材・構成=四竈衛】

◆植松泰良(うえまつ・たいら)1983年9月26日生まれ、千葉県出身。02年に西武台千葉を卒業し、単身渡米。カリフォルニア大サンタバーバラ校を経て南イリノイ大カーボンデール校に入り、アスレチックトレーニングの学位を取得して06年卒業。同年にジャイアンツ傘下3Aフレズノにブルペン捕手のインターンとして入団し、07年にフルタイムのブルペン捕手となった後、メジャーに昇格。ジ軍のブルペン捕手として今季が14年目で、シーズン後にアシスタントコーチ昇格。