二刀流旋風を巻き起こし、ア・リーグMVPなど数々の賞を総なめした。その歴史的シーズンを経て、2022年を迎えたエンゼルス大谷翔平投手(27)の新たな1年は、どんなシーズンになるのか。米国で出版した大谷本の反響で、ベストセラー作家となったスポーツジャーナリストのジェイ・パリス氏と米ベテラン野球記者が、大谷の今季行方を占った。【取材・構成=水次祥子】
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私が大谷本を出版したのは彼がメジャー1年目を終えた2018年11月だが、ベストセラーになったのは彼が二刀流で大ブレークした昨年のことだった。これまでは野球ファンの男性読者が多い印象だったが、今は女性読者が増えている。野球に関心のない層が大谷本を手に取っているということで、彼は確実に野球ファンの裾野を広げた。
彼は米球界の顔になれると思うし、あるレベルまではもう、すでに顔だ。そういう面でも大谷はベーブ・ルースと重なる。ただ米国の人々は野球人ルースだけでなく、米国社会の重要な存在としてのルースが持つ神秘性をいつまでも忘れないと思う。それほどの存在と比較されるというのは大変なことだが、たとえば言葉の壁が大谷の存在感を薄れさせることはないと思う。
彼がどれくらい長く二刀流選手でいられるのかは、彼自身が一番よく知っている部分だと思うが、見ている者としては可能な限り長く続けてほしいと願っている。さらなるレベルアップも続けるだろう。海を渡り、新たな文化と環境に身を置きながら、最高レベルのリーグで二刀流で戦うという困難は、慣れによって多少緩和されていく。対戦相手も対策を練って攻め方を変えてくるだろうが、彼の才能が常識を超えるレベルなので、今のところは敵にとって完璧な攻略法が見つからない状態だと思う。
もちろんこれは、大谷がケガなく体調万全が前提。6カ月間、公式戦162試合を二刀流でやり切る体力と精神力を持つ選手はほとんどいない。健康が維持できれば、彼に不可能はないと思う。
◆ジェイ・パリス カリフォルニア州在住のスポーツジャーナリスト。NFLやMLBの本を出版し、全米プロフットボール記者協会賞を3度受賞。エンゼルス大谷の軌跡をつづった本が米国でベストセラーになり、日本で翻訳版「大谷翔平 二刀流の軌跡」(辰巳出版)が出版されている。
スコット・ミラー氏 ロードに向上余地ある
◆スコット・ミラー氏(野球コラムニストで「野球の90%はメンタル」著者)「大谷が昨季以上にレベルアップできるかと聞かれたら、それはゴージャスで美しい夕焼けを見てそれ以上のものを望むようなものだ。ケガさえしなければ、彼は我々の時代の最も卓越した選手であり続けると思う。改善すべき点はほとんどないが、もしさらに上を目指し努力したら、無限にレベルアップするだろう。1つ強いて言うなら、ロードでの登板10試合で3勝2敗、防御率5・02という数字は、向上の余地がある」
デービット・レノン氏 POで戦う姿みたい
◆デービッド・レノン氏(ニューヨーク・ニューズデー紙コラムニスト)「エンゼルスが今季ペナント争いができるチームになった場合、大谷の肉体的な負担はさらに大きくなる。ポストシーズン進出を目指し162試合を戦い抜くのは、プレッシャーも増大し、勝負もタフになるからだ。その状況では、投打のバランスをどう取ってシーズンを送るかが大きなカギになるし、彼にとって最大のチャレンジになる。みんな彼がプレーオフで戦う姿を見たいと思っている」
ディラン・ヘルナンデス氏 彼が言うなら向上する
◆ディラン・ヘルナンデス氏(ロサンゼルス・タイムズ紙記者)「大谷はハッタリを言いそうなタイプではないので、彼が昨季以上の成績を出す自信があると言うなら、きっと出せると思う。トラウトやレンドンが健康でいられて試合に出られれば、相手投手は大谷を攻めなければいけなくなるので、本塁打数が増えてもおかしくない。打線が強くなれば、投手としての勝利数も上がる。大谷はアジャストする能力が非常に高いので、相手の攻略法にもすぐに対応すると思う」
デービット・ウォルドスタイン氏 今季もMVP獲得する
◆デービッド・ウォルドスタイン氏(ニューヨーク・タイムズ紙記者)「大谷は今季もMVPになると思う。オールラウンド選手としてはベストで断トツだ。46本塁打、8三塁打、出塁率3割7分2厘の昨季成績はそう簡単に超えられるものではないし、たとえ昨季より多少成績が下がったとしても十分にMVPに値する。もしプラス要素があるとすれば、チームをプレーオフに導くこと。バリー・ボンズ以来の万能選手であり、彼の活躍を見られることに感謝したい」
◆「大谷翔平 二刀流の軌跡」 正式名称は「Shohei Ohtani:The Amazing Story of Baseball’s Two-Way Japanese Superstar」。米1年目シーズン終了後の18年11月に出版。各月のハイライトや現地記者、ソーシア監督(当時)、同僚などのエピソードを交えながら大谷のルーキーイヤーを紹介している。