エンゼルス大谷翔平投手(28)が、米国のドラフトを変えた。MLBのドラフト会議が17日にロサンゼルスで始まり、1巡目で二刀流選手が2人指名された。

ブレーブスは全体20位でオーウェン・マーフィー(18)、ジャイアンツは全体30位でレジー・クロフォード(21)を指名。クロフォードは、ドラフト1巡目初の「ツーウエー・プレーヤー(TWP=二刀流選手)」登録になった。ともに二刀流としてキャリアを始める予定で、大谷の活躍が他球団の育成にも大きな影響を与えている。

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◆解説 今回のドラフトで「二刀流」の可能性を秘めた選手が上位で指名された経緯は、大谷の存在なしには語れない。日米を問わず、アマ時代に「エースで4番」の才能を持つ選手は数多い。だが、これまでは「二刀流」の育成法、起用法どころか、その概念すらなく、指名の際には打者か投手を選択することが常識とされていた。だが、大谷の活躍により、「TWO-WAY」(二刀流)の登録枠が新設されるなど、球界全体の認識は変わった。

20年ナ・リーグMVPのフレディ・フリーマン一塁手(32=ドジャース)は、高校時代、最速155キロの速球を投げる才能を持ち、多くの球団が投手として指名する意向を伝えていた。だが、07年のドラフトではブレーブスが打者として2巡目(全体78位)で指名。プロ入り後は、スラッガーへの道を歩んだ。当時、右肘痛を抱えていたこともあり、フリーマン自身に悔いはない。その一方で、昨年の球宴時には「誰もが翔平がやっていることをできるとは思わない。だが、少なくとも二刀流への扉が開かれたことで、より多くの選手がこういう機会を与えられるようになるだろう」と、今後のモデルケースになることを予言していた。

17年、レッズから1巡目(全体2位)で指名されたハンター・グリーン投手(22)は、ドラフト前から「二刀流」として注目されていたものの、最速164キロを計測したこともあり、プロ入り後は投手に専念。5年目の今季、先発ローテの一角としてメジャーデビューを果たした。

世界最高レベルのメジャーで、「二刀流」でプレーすることは、並大抵のことではない。ただ、才能豊かな若者の可能性を事前に摘む必要もない。時速160キロ超の速球を投げ、特大アーチをかける大谷が、メジャーの常識を変えたことは間違いない。その一端が、今ドラフトでもあらためて浮き彫りになった。【MLB担当=四竈衛】