ついに西海岸の主要メディアが、エンゼルス大谷翔平投手(28)とヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(30)のア・リーグMVP争いに、もの申した。ロサンゼルスタイムズ電子版が19日(日本時間20日)、「ジャッジか大谷か? MVPの議論は、数字より多くの影響を受けるかもしれない」と題した記事を掲載。東海岸のニューヨークポストのヘイマン記者が「東海岸びいきなどない」とジャッジのMVPが当然だとする主張に、痛烈なカウンターパンチを浴びせた。

記事はまず、MVPの投票用紙に「『最も価値がある(Most Valuable)』とは何を意味するのか、明確な定義はない。決めるのは投票者個人だ」と書かれていると紹介した。

価値を示す例として、大谷が13勝目を挙げた17日の試合内容を示した。「2-1でプレーオフ進出を狙うマリナーズに勝利した。大谷は(打者として)1得点、1打点で(投手として)無失点だった。1人で勝ったも同然。とても『価値があることだ』」。そして「大谷はこのように先発出場できる。他の誰もできない」、「大谷は28歳。これからもできる」とし、「大谷は今年MVPを受賞すれば毎年受賞するかもしれない。それは公平なのか?」と問い掛けた上で、選考する全米野球記者協会に「『価値があるとは何か』の定義を促すだろう」と見解を打ち出した。

ヘイマン記者が示した大谷を擁護する「東海岸びいき(東海岸バイアス)、西海岸びいき(西海岸バイアス)」には「もしジャッジがヤンキースより成績の良いアストロズで60本目の本塁打を打ったら、リーグ最大のメディア市場でプレーすることで生じる注目を集めることはないだろう」と対処した。さらに「『エンゼルスで雇用されているか(エ軍が本拠地を置く)オレンジ郡に住む人以外は、ほぼすべてジャッジがMVPと信じている』といった、ばかげた東海岸びいきにさらされることもないだろう」と強烈なパンチを食らわせた。

MVP選考では影響の大きいWAR(代替選手と比べて上積みしたと想定されえる勝利数)ではジャッジがリードしているが「10年前(エンゼルス)トラウトがWARでリードしたが、(3冠王の)カブレラ(タイガース)がMVPだった」と、さらりと触れた。

その上で「ジャッジは62号『本物の』シーズン本塁打記録を樹立するか」という論調になっているが「本物のシーズン本塁打記録は73本」だと主張した。61本はマリス(ヤンキース)の記録で、それ以上はステロイドが全盛だった時代のボンズ(ジャイアンツ)らの時代に樹立されている。だが「野球は遡及(そきゅう)的な処罰をしない」として、サイン盗みが発覚したアストロズのワールドシリーズ優勝が剥奪されていない例を挙げながら、ボンズの記録を抜いてこそ祝福されるべきだとした。

同紙は結論として「1人しかMVPにふさわしい候補がいないと示唆することは、2人を見下すような言い分だ」とした。