ヤンキースのドミンゴ・ヘルマン投手(30)が28日(日本時間29日)、敵地アスレチックス戦で完全試合を達成した。9回を99球、9奪三振の快投で、メジャーでは12年8月のフェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)以来11年ぶり24人目、ヤ軍では99年7月のデビッド・コーン以来、24年ぶり4人目の快挙となった。

9回裏、最後の打者を三ゴロに打ち取ったヘルマンは、両手を広げ、駆け寄って来る同僚の歓喜の輪に身を任せた。試合後は、ウイニングボールを手に記念撮影。その間、何度となく、記念球を天に掲げた。「この試合は彼のためだったんだ」。2日前、愛する叔父が他界した。「昨日はクラブハウスでずっと泣いていたんだ」。涙が乾いた顔に、満面の笑みが広がった。

19年に自己最多の18勝を挙げ、エース級の期待を背負った右腕も、紆余(うよ)曲折の野球人生を送ってきた。同年9月には家庭内暴力の嫌疑で出場停止処分を受けた。コロナ禍の20年7月には、自身のSNS上で「僕は野球から離れる」と1度は引退を示唆。その翌日にコメントを撤回するなど、情緒不安定ともみられる時期を過ごした。今季も5月には投球の際に粘着物質を使用したとして、10試合の出場停止処分を受けた。直近2試合は計5回1/3で17失点(自責15)と、不安定な投球が続いた。

「とても興奮している。多くの人が完全試合のチャンスがあるわけでなく、こんなことを達成できるわけではないからね」。本番を迎えるポストシーズン争いを前に、頼もしい右腕が快挙で勢いをつけた。

▼ヤンキースのヘルマンが12年ヘルナンデス(マリナーズ)以来11年ぶりの完全試合。ドミニカ共和国出身で、米国以外の出身者ではデニス・マルティネス(ニカラグア)、前記ヘルナンデス(ベネズエラ)に次いで3人目。前回登板のマリナーズ戦では10失点で、2桁失点の次戦で完全試合は初めて。背番号0の投手も初めて。

▼抑えられたアスレチックスは1991年以来32年ぶりのノーヒッター献上で、現在メジャーでは最長ブランクだった。