エンゼルス大谷翔平投手(29)は、2年ぶり2度目のMVP受賞が確実されています。今季は打者で打率3割4厘、44本塁打、95打点で初の本塁打王に輝き、投手では10勝5敗、防御率3・14。史上初となる2年連続の「2桁本塁打&2桁勝利」を達成しました。二刀流の活躍を続ける大谷を、他球団のライバルたちはどう見ているのか。11月16日(日本時間17日)のMVP発表まで、随時連載します。

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タイガース時代に打撃3冠と2度のMVPを獲得し、今季限りで現役を引退したミゲル・カブレラ氏(40)は、大谷翔平投手(29)の2年ぶりとなる栄冠を確信していた。今シーズン終盤の9月中旬。日本人初となる本塁打王のタイトル獲得が近づいていた大谷に向けて、力強く言った。

「彼はMVPだよ。また、MVP選手になる」

既に引退を表明していたカブレラにとっては、エンゼルスとの最後の3連戦だった。試合前のクラブハウスでは、リラックスしながら日本人メディアを笑顔で歓迎し、改めて大谷の可能性について語った。

「今年はケガをしてしまったけど、成績も良くなって、とても素晴らしかった。強く、健康で居続けることができれば、彼が3冠王になるチャンスはある。もっとも印象的だったのは、中5日でピッチングをしていたことだね。打者でプレーしながら登板することは、とても難しい。それを完璧にやって、投手と打者でハイレベルなパフォーマンスをしていたのは、本当に素晴らしかった」

脇腹を痛めて欠場していた大谷とは、両軍ベンチから互いにニヤニヤと、ジェスチャーでトークを交わした。これまでも対戦カードで顔を合わせれば、出塁した大谷に対してカブレラが一塁ベース上でちょっかいを出していた。時には隙を突いて股間をタッチする場面も。2人のかけ合いは度々、話題となった。

実はカブレラは、早い時期から大谷の潜在能力を見抜いていた。5年前、まだメジャー1年目の18年5月、二刀流のフル稼働を進言。その上で、投打でのタイトル獲得に期待を寄せた。

「3冠王もとれるし、サイ・ヤング賞もとれる。だけど、彼は打てるんだから、もっと試合に出ることだ。今は少しずついろいろ学んでいるんだろうけど、ピッチングをしている日に、打つことだってできるだろう。それはアンビリーバブルなことだ。ハッハッハ」

当時は笑い飛ばしながら語っていたが、この助言は後に現実となり、大谷は秘めていた力を発揮した。4年目から投打で同時出場するリアル二刀流が解禁。登板日の前後1日の休養も撤廃され、投打でほぼフル出場するようになった。すると、21年は満票でMVPを獲得。今季は日本人初の本塁打王に輝いた。

カブレラはメジャー通算2797試合に出場し、打率3割6厘、511本塁打、1881打点の結果を残した。「21年プレーしてきて、十分やった。サポートしてくれた全ての人に感謝したい」。そして、好成績を続ける秘訣(ひけつ)について明かした。「最も大事なことは今、何をするかだ。次の年、2年後も考えるべきだが、いま自分がやるべきことをやる。毎日ね。それが一番大事なこと」。限界まで戦い抜いたレジェンド打者の言葉には、重みがあった。【斎藤庸裕】

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