【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)20日(日本時間21日)=四竈衛、斎藤庸裕】ドジャース大谷翔平投手(29)が、今季初の3連敗を喫したチームを代表し、巻き返しへの意欲を語った。本拠地でのメッツ戦に2打数1安打3四球と4度出塁したものの、チームは追い上げ及ばず惜敗。“ゴジラ超え”となるメジャー通算176号への意識ではなく、自軍の勝利へ強い思いを明かすなど、新リーダーとしての姿勢をのぞかせた。

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質問者の目を見つめ、丁寧に応答する大谷の口調に、3連敗の重苦しさはなかった。敗戦後、足早に引き揚げる同僚を代表するかのように、クラブハウス外に設置された取材場所で、選手で唯一人、カメラの前に立った。

表情を変えることなく、素直な胸中を口にした。「みんな必死になってやっているので、切り替えていくしかないと思います」。強い思いを込めた主語は「僕」ではなく、「みんな」だ。大谷個人へ向けた質問も、チーム全体の戦いぶりや状況を客観視する言葉に置き換えた。その姿は、ド軍の先頭に立つリーダーそのものだった。

戦況を冷静に見極める、主軸の自覚がにじんだ。1番ベッツを二塁に置いた3打席では、ボール気味の球で誘いをかけるメ軍バッテリーの思惑を見抜いたかのように、3四球でつないだ。先頭で迎えた5回は右翼線二塁打で出塁。空振り三振に倒れた6回1死満塁の好機は「あそこはテイクする(待つ)のがベストの反応」とした上で「反省はしますけど、引きずってもしょうがない」と、背筋を伸ばした。

両軍で計17四球の乱戦となった一方、1点差で迎えた8回には、ド軍、メ軍ともに上位打線封じのため、最終回を待たずにクローザーが救援。両軍ベンチの執念みなぎる采配に、開幕間もない4月とは思えない緊迫感が漂っていた。試合開始数時間前。人影もまばらなグラウンドでは、今季から遊撃にコンバートされたベッツが連日の特守、打撃不振のフリーマンが逆方向への打撃練習を繰り返すプロ集団。全員が同じ方向を見つめ、地道な作業に専念する環境を、大谷も意気に感じているはずだ。

大谷自身は過去7戦ノーアーチで、チームも3連敗。「確かに連敗が重なると、暗くなることはあると思いますけど、早く切り替えて明日に臨むというのが、まず大事」。「個」だけでなく、チームを俯瞰(ふかん)する大谷の視線は、明らかに昨季までとは違う。