救世主に、オレはなる! 借金5でリーグ最下位と苦しむ阪神は11日、ここまで5敗と不振のランディ・メッセンジャー投手(33)の出場選手登録を抹消した。開幕投手が再生をかけて一時ローテーションを離脱する危機に、代役となる第5の助っ人が発奮。右腕マリオ・サンティアゴ(30=元ドジャース3A)が準備OKとばかりに腕を回した。

 1人異国の地からやってきた男が拠点となる鳴尾浜の2軍施設で、黙々と練習に明け暮れていた。練習後、取材に応じたサンティアゴは「チャンスの足音」を聞き闘志を燃やした。

 「日本に来たときから、下だろうが上だろうがやれることは全部やろうと思っていた。上にいけるのが目標だけど、いつ呼ばれてもいいようにしてきたよ」

 誰もが予期していなかった開幕投手メッセンジャーの離脱。再生を図るため、出場選手登録の抹消に踏み切った。最短でも10日間、ローテーションの軸が不在。代役はサンティアゴが務めることになりそうだ。

 3月に契約した第5の助っ人。実は、ただ者ではない。13年WBCにプエルトリコ代表として参加。準決勝の日本戦に先発し5回途中まで2安打無失点と好投。日本の3連覇を阻んだ男として知られる。

 当時は最速150キロを記録するハードシンカーで鳥谷、内川、阿部、中田ら日本を代表する打者を牛耳った。世界に名を売ったその一戦で右肘靱帯(じんたい)を断裂。13年4月に靱帯再建のトミー・ジョン手術を受け、1年以上のリハビリを余儀なくされた。

 この春は米マイナーリーグからのオファーもあった。「レベルの高い日本でプレーしたい」と渇望。メッセンジャーだけでなく呉昇桓、ゴメス、マートンとタイトルホルダーがそろう阪神と、契約を結んだ。

 1軍昇格すら険しい状況は、織り込み済みだった。ウエスタン・リーグでは格の違いを見せつけ、6試合に投げて防御率は1・80。1勝2敗と星には恵まれないが着々とレベルアップに励んできた。夜は欠かさず、1軍の試合をテレビ観戦。真摯(しんし)に日本の野球を学んできた。

 「出来るだけ勉強するようにしてるんだ。しっかりそれを生かせるように、継続してこれからもやっていきたいね。チャンスをもらえたなら自分の仕事をするだけ。とにかく全力でやるだけだよ」

 メッセンジャーは当初、中4日で15日中日戦に向かうと予想されていた。台風の影響が懸念される今日12日、明日13日ヤクルト戦の状況次第で「ローテの谷間」が消滅する可能性も残るが、現時点ではサンティアゴが同中日戦で穴埋めを期待される。今日12日にも東京に移動し1軍に合流する予定。侍ジャパンを翻弄(ほんろう)した「カリブの魔術師」が救世主役に名乗りを上げた。【梶本長之】

 ◆マリオ・サンティアゴ 1984年12月16日、プエルトリコ生まれ。米バトンルージュ大から05年ドラフト16巡目でロイヤルズと契約。マイナー通算156試合、36勝51敗、防御率4・04。12年は韓国・SKに在籍し、18試合6勝3敗、防御率3・40。WBC日本戦で勝利投手となった13年4月にトミー・ジョン手術を受け、14年オフに母国のウインターリーグで復帰。188センチ、95キロ。右投げ右打ち。