土壇場でジャイアンツ力を発揮した。巨人は9回に同点に追いつかれたが、その裏に途中出場の寺内崇幸内野手(32)がサヨナラ適時打を放った。寺内に加え、代打から2安打2得点の亀井に、1-1の7回1死三塁で代打適時打の高橋由とベンチスタート組が活躍し、原辰徳監督(57)は「うちの特長」と喜んだ。負ければ首位ヤクルトにマジック6が点灯するピンチを、全員の力で乗り切った。

 初めて見る光景に、興奮を抑えきれなかった。同点の9回1死二塁。途中出場の寺内が、阪神呉昇桓のカットボールを無心で振り抜いた。打球は左中間に転がり、人生初のサヨナラ打。ペットボトルを手にダッシュしてくる仲間から、満面の笑みで水を浴びた。「最高でした。監督が任せてくれたので何とか打とうと思った。明日も勝つ!」と声を上ずらせた。

 土壇場で、ジャイアンツの強さが出た。勝因を聞かれた原監督は「全員の力で戦って、全員の力で勝利した」と力強く言った。巨人を率いて通算12年目。多くの選手をじっくり観察し、鍛え、束ねてきた。だからこそ、先発と控えの垣根なく「ベンチ全員がレギュラー」との考えがある。「今日は野手が17人で、スタートメンバーがまず行く。役割を持った中でベンチに入ってもらっている」と、ベンチ全員の力を信じて戦うスタイルを貫いた。

 負ければ優勝が遠のく一戦で、培ってきた力を発揮した。1-1の7回無死。代打に亀井を送った。堂上も候補だったが、ともに戦ってきた村田総合コーチの進言にうなずいた。亀井が二塁打で突破口を開き、その後の代打高橋由の適時打を呼び込んだ。9回にも先頭打者で出塁して生還と2安打2得点。亀井は「みんな準備しているから、グラウンドで発揮できる。脇役らしい活躍ができてよかった」と納得の表情だ。

 9回に寺内をそのまま打席に入らせたのも、原監督には根拠があった。「意外性というか力を発揮できる」。13年の楽天との日本シリーズで田中(現ヤンキース)から本塁打を放つなど、大一番での勝負強さを信じた。寺内、亀井、高橋由。ベンチで出番に飢えるバットマンたちの活躍に「うちの特長であると思います」と胸を張った。

 阪神に2連勝し、首位ヤクルトを2ゲーム差で追う。東京ドーム10連勝の話題には「振り返ることが下手くそなもので」と笑顔で制し、残り7試合に視線を送った。「一番の力の見せどころ。明日からも戦っていきたい」。チーム力が試される、ドキドキの展開は望むところ。巨人の結束力が深まってきた。【浜本卓也】

 ▼巨人が今季7度目のサヨナラ勝ちで、本拠地の東京ドームでは8月18日阪神戦から10連勝。東京ドームの連勝は12年6~7月の11連勝が最多で、10連勝が89年6~8月、08年8~9月、12年8~9月、13年3~4月に記録しており、2桁連勝は今回で6度目だ。東京ドームでは残り4試合だが、そのうち3試合がヤクルト戦。過去に東京ドームで2桁連勝したシーズンはすべて優勝している巨人が、連勝を伸ばして逆転Vなるか。