侍ジャパンがまさかの逆転負けを喫し、世界一奪還の夢がついえた。ライバル韓国との準決勝。3点リードの8回から継投に入ったが、9回に4失点で逆転を許した。先発の大谷翔平投手(21)が7回無失点と完璧に抑えただけに、継投の失敗が際立ってしまった。小久保裕紀監督(44)は相手の流れを止められなかった継投ミスを認め、責任を痛感していた。決勝進出はならず、21日の3位決定戦に回る。

 初めての敗戦で初代王者への道が断たれた。小久保監督は、真っ赤な目で悔しさを吐き出した。「絶対勝たないといけない試合で負けた事実。非常に悔しい。そのひと言です」。

 手をかけていた決勝の舞台がこぼれ落ちた。「大谷が7回を投げきった時点で、則本を2イニング行かそうと決めていた。(1点を返された後の)無死二、三塁で松井という選択肢もあったな、と思う」。大谷の快投を継投ミスで勝利につなげられず「あれだけの投球をフイにして申し訳なかった」と頭を下げた。

 準々決勝までの6戦で7回以降に9失点するなど、リリーフ陣の起用は大きな課題だった。小久保監督は「クローザーを集めて7、8、9回をつなごうという思いがあった」と、中継ぎ専門の投手は招集しなかった。各球団で9回を託される守護神には、走者を背負った場面での登板経験が少ない。覚悟を持って決めた構成が大一番で崩れ、「そういうメンバーを集めた僕の責任」と背負った。

 監督自身の経験不足も響いた。ここまで、試合中のブルペンでは1人ずつの投手しか準備していなかった。左右など複数の投手を用意するなど、どんな状況にも対応する準備は欠けていた。この試合の9回には松井、増井の左右を待機させていたが、小久保監督は「勝たないといけない中での継投の難しさは感じていた」と明かした。

 2つの責任を背負って今大会に臨んだ。指揮官として世界一の奪還。そして常設となった侍ジャパンの初代監督として、アンダー世代の目標となる選手の育成。「チームの主力を預かるので、戻ったときには手本になる主力にして戻したい。日本代表を担う選手は、みんなの手本にならないといけない」。侍たちを信頼し続けたことが、土壇場での起用の迷いにつながってしまう側面もあった。

 試合後のロッカー室で小久保監督は選手を集めて伝えた。「今日の負けの責任は全て俺にある」。そして続けた。「最後にもう1試合残っている。世界一の目標は達成出来なかったが、ファンがいる限り、最後の最後まで、全力で最後勝ちきろう」。1つの責任は果たせなかったが、まだやらなければならない仕事は残っている。21日には3位決定戦がある。日の丸を背負う男たちが、下を向く姿は見せられない。【佐竹実】

 ▼日本は9回に一挙4失点で逆転負け。プロが参加して以降の五輪、WBC、プレミア12で1イニング4失点は、シドニー五輪予選リーグ韓国戦の1回、北京五輪1次リーグ米国戦の11回(タイブレーク)、同準決勝・韓国戦の8回、同3位決定戦・米国戦の5回に次いで5度目のイニング最多失点。全5試合で黒星を喫しており、韓国戦は最多の3試合目。これまで4試合はすべて同点からの4失点で、一挙に逆転を許したのは初めて。