苦しい時こそ、頼りになるのはベテランだ。日本ハム田中賢介内野手(37)が11日、ソフトバンク18回戦(ヤフオクドーム)で勝負強さを発揮した。途中出場し、1-1の9回1死満塁からこの日の2打席目。故郷福岡の両親や友人が見守る中、凱旋(がいせん)試合で勝ち越しの2点中前適時打を放ち、競り合いを制した。チームは連敗を2で止め、7試合を残し、今季ソフトバンク戦の勝ち越しを決めた。

 敵地の打席に立った背番号3は、打つ気満々だった。1点勝負となった投手戦は、9回へ。1死からレアード、鶴岡の2連打に死球で、満塁の大チャンスだ。打席には37歳のベテラン田中賢。二塁走者の鶴岡は、バットを構える親友の姿を見て「昔からヤフオクでは、よく打つ印象だったから、打つんじゃないかと思っていた」という。そして、予感は的中した。

 「打てる球が来たら、全部振っていこうと思っていた」と田中賢。1ボールから、ソフトバンク森の2球目、外角高めの148キロ速球を捉えた。打球は前進守備の二遊間をきれいに破り、中前へ。「最近、厳しい戦いが続いていたから、みんなが回してくれたチャンスで何とかしたかった。プレッシャーは感じていたけど、何とかなって良かったです」。6月27日の試合でも、9回に森から同点適時打を放ち、逆転サヨナラ勝ちにつなげている。重圧をはね返して放った殊勲打に、鶴岡も栗山監督も「さすがです」と声をそろえた。

 長きにわたって、レギュラーとしてチームを支えた。世代交代が進む中、昨季は出場機会が激減。役割は大きく変わった。代打や代走、守備固め…。「(途中出場は)難しいけど、それが自分に与えられた役割」。確固たる調整法は、まだ見つからない。それでも「チームが乗っている時は出る幕ないでしょうけど、苦しい時にしっかり活躍できたらと思う」。チームとって、欠かせないピースだ。

 チームは連敗を2で止め、対ソフトバンクの2年ぶりシーズン勝ち越しを決めた。福岡の実家から応援に駆けつけた両親、友人らの前で、ベテランの仕事を全うした背番号3は「まだ優勝のチャンスはあるので、チーム一丸となってやっていきたい」。最近、疲れの見える後輩たちに、活を入れた。【中島宙恵】