巨人菅野智之投手(28)は、純な思いを右腕に込めた。広島打線を寄せ付けず、9回4安打無失点。力強く白星をつかむと、言葉を紡いだ。「誰かのために投げようと思ったことはあまりないけど、今日はしっかり監督のために投げようと思いました」。今季限りでの退任を発表した高橋監督にささげる勝利だった。

これぞエースの投球だった。得点圏に走者を置くとギアを上げ、三振を奪った。1回1死二塁から丸、鈴木を連続三振。4回も1死二塁から鈴木、メヒアを空振り三振に斬って取った。17年4月25日以来となる敵地マツダスタジアムでの完封勝利。「どの試合も負けられないけど、マツダでチームが0に抑えて勝てた」と胸を張った。

高みを登り切った。15勝、10完投、200回投球を達成。すでに到達していた4項目(登板25試合、勝率6割、150奪三振、防御率2・50以下)から、沢村賞の選考基準全7項目をクリアした。加えて球団では81年の“怪物”江川以来37年ぶりに200奪三振を記録。「去年から狙って沢村賞を取ると言っていた。使ってくれた監督、コーチ、トレーナーに感謝したい」と力強く、王者をねじふせた。

6回1死一、三塁からは大きな追加点となるスクイズも成功。快刀乱麻の活躍に、高橋監督の言葉もいつも以上に弾む。投球回、完封数を絶賛し、「すごいこと。言葉がないよね」とたたえた。

CS進出に向けても大きな1勝を挙げ「CSはここ(マツダ)でやる。弾みをつけられた」と言い切った。見据えるのは下克上、そして日本一だ。【島根純】