関甲新学生野球リーグの上武大が13日、風変わりな成人式を行った。

群馬・伊勢崎市の同校で、新成人の2年生39人が1人200本のノックを受けた。その名も「成人ノック」。同校伝統行事で、先輩やOBのノックで泥だらけになり、一体感を高めた。

上州の「からっ風」ではなく、ハタチの気合がグラウンドに砂煙を起こす。200本を終えると、全員で谷口英規監督(49)にノックを志願。39人連続無失策がノルマの挑戦が始まった。何度も失敗しながら「1球にかけろ」「全員で決めよう」と声を掛け合う。指揮官はほほ笑みながら、ノックバットは容赦なく振った。

華やかさでは東京6大学、東都大学リーグには勝てない。00年就任の谷口監督は選手ともがきながら「チームの一体感が、見えない力を生む場面が必ずある」と勝負における結束力を重視してきた。13年に日本一になり、プロ野球選手も着実に輩出する関東有数の強豪校に成長した。

故郷の成人式には出席せず、泥だらけで白球に立ち向かう。谷口監督は「時代にそぐわないのかもしれません」とつぶやいた。「それでも、たかだかノックですけれど、いま頑張っている場所で得られるものは一生の思い出になる。そう信じて、やっていますよ」としみじみ続けた。

全身真っ黒になった金子益彬外野手(2年=浦和学院)は「すごく感動した。今日のことは一生忘れません」と白い歯を見せた。この日は約2時間半、1万球近いノックが飛び交った。最後は普段ユニホームを着ない潮田稜太マネジャー(2年=本庄一)がダイビングキャッチし、ノルマ達成。喜びでもみくちゃになりながら、39人で大人になった。【金子真仁】