東日本大震災で被災した東北出身の2人が、社会人野球で「3・11」公式戦デビューを果たした。

球春を告げる社会人野球東京大会が11日、東京・神宮球場などで開幕した。東京ガス(東京)のルーキー楠研次郎外野手(22=富士大)は東海理化(愛知)との1次リーグ初戦に「3番・右翼」で先発出場した。

福島・楢葉町出身で福島第1原発事故の影響を受けて、県南部のいわき市に家族で転居。「今日は忘れられない日になりました」と、試合後は思いを募らせた。

5-4で勝利したが、自身は4打数無安打。初回の無死一、二塁の好機には三ゴロ。2打席目は三邪飛、3打席目は無死一、三塁で3ボールから積極的に狙ったが一ゴロ。最終打席も中飛に終わった。「こんなに緊張したのは初めてです。捉えたと思ったボールも、力みすぎて芯を捉えられなかった」と平常心ではなかった。

12日には三菱日立パワーシステムズと対戦する。「フルスイングができなかったわけではないので、力まずに打席に立てれば結果も出てくるんじゃないかと思います」。富士大(岩手)では北東北大学リーグ10連覇に貢献し、リーグ歴代2位の通算102安打を放った打力を披露するつもりだ。

トヨタ自動車東日本(岩手)2年目の千葉英太投手(19=千厩)は、昨年5月の右肘手術を乗り越え、公式戦初のマウンドに立った。

岩手・藤沢町(現一関市)出身で、藤沢小5年時に被災。学校内をワックスがけしていた掃除中に地震が発生し、校舎も一部崩壊した。「水などが出なくなったのも鮮明に覚えています。3月11日に試合で投げられたことは、特別な思いもあるし、何か運命があるのかなって思いました」。

先発し、3回1/3を投げ6失点。苦しい内容となったが「去年1年を棒に振ったので、今年こそチームに貢献したい思いもあった。高めにボールが浮いてしまって制球に苦しんだし、修正しきれなかったのは悔しい。残りの2試合で投げられたら、次こそ良い投球を見せたい」と前を向いた。

千厩時代には久慈との県大会4回戦で、延長13回を投げて23三振を奪った「岩手のドクターK」。この日の最速も145キロ。初回に3ランは浴びたが、神宮の舞台で素質の片りんは示した。

19年の「3・11」は、忘れられない野球人生の新たなスタートにもなった。【鎌田直秀】