眠っていた虎に春が来た! 矢野阪神がオープン戦8試合目で待ちに待った初勝利を挙げた。1軍に再合流した高山俊外野手(25)が2回に先制の右前適時打を放つなど2安打2打点と活躍。触発されるように打線も12安打5得点と爆発した。引き分け1試合を挟んで6連敗中だった阪神がようやくお目覚めだ。

   ◇   ◇   ◇

反骨の男が勝利の使者だった。2回無死一、三塁。7番高山が、山井の初球スライダーを捉えて右前へ先制打を放った。一塁ベース上で両手を突き上げてガッツポーズ。4回には中堅フェンスにぶち当てる決勝のタイムリー。「今日はすごく、うまくいきました」。チームを乗せたのは、背番号9のバットだった。

沖縄・宜野座キャンプを終えて2軍行き。教育リーグ5試合で打率3割8分1厘と打ちまくり、今回の名古屋遠征から1軍に復帰した。矢野監督も「やっぱりあいつの気持ちが出てたと思うし、ただ単に上がってきただけじゃなく結果出すという」と称賛。キャンプから競争を掲げて高山の打撃を辛抱強く見守ってきただけに目尻を下げた。中堅争いではルーキー近本に差をつけられていたが、16年新人王が待ったをかけた。

この日はヒットを打った高山が、木浪が、福留までもがベース上で両手を突き上げた。矢野監督は「なんかメキシコの選手がそういうのいいよな、って(ミーティングで)話してくれて。でも、やっぱりプロで楽しむって究極。今日みたいにどんどんやればいい」と説明。侍ジャパンのコーチとしてメキシコ戦を戦った清水ヘッドコーチが、ラテンのエキスを注入したのだ。チーム打率1割8分3厘と低迷していた打線が12安打と活性化した。

2月下旬からスタートしたオープン戦。12球団で最後に白星を手にした矢野監督は「みんなに責められるんでね。意識してましたけど。オープン戦とはいえ、勝つのは大変なんで」と笑った。3回には一塁のセーフ、アウトを巡って就任初のリクエストも要求するなど勝利への執念も見せた。高山は「おごらずにまた明日、いい準備をしたい」と表情を引き締めた。オープン戦残り9試合。矢野阪神は激しい競争を続けながら本番に突き進む。【桝井聡】

◆阪神の外野争い 左翼はベテラン福留で不動だ。シュアな打撃に定評のあるナバーロ、2軍調整になった陽川も控える。右翼は右膝痛で出遅れているが糸井が君臨。開幕スタメンは糸井が確実だが、負傷など非常事態が発生すれば、高山も備えている。中堅は激戦区だ。ドラフト1位の近本、中谷に、1軍再合流の高山もさっそくアピールした。候補の1人だった江越は2軍で調整中で、巻き返しを図る。