ロッテ、大リーグ・メッツなどで活躍し、今年1月から母校で指揮を執る早大・小宮山悟監督(53)が快勝で初陣を飾った。東大に13-1で先勝。選手たちに厳しさを求めつつ、自主性を尊重する指導で7季ぶり優勝へ向け好スタートを切った。立大は田中誠也投手(4年=大阪桐蔭)が明大・森下暢仁投手(4年=大分商)に投げ勝ち、2年ぶりに完封勝利を挙げた。

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初陣白星の感想を問われた小宮山監督は表情を崩さなかった。「特別には。選手がよく頑張ってくれました」と淡々。ウイニングボールは「(先発勝利の)早川が持ってていいです」と素っ気ない。内心は少し違ったようだ。主将の加藤雅樹外野手(4年=早実)の証言。「監督さんに渡したら、すごく喜んでました。『あと9個くれ』と」。10個の勝利球、すなわち勝ち点5。完全優勝へ、確かな1歩を踏んだ。

15年秋を最後に優勝から遠ざかる母校の再建を託された。大リーグ経験者が国内の大学で監督を務めるのは初で、早大の元プロ監督は47年秋~57年森茂雄氏以来。オフに対面した選手たちは「日本一」を掲げた。その意気やよし、とは思わなかった。「軽々しく口にできるせりふじゃない。覚悟を示せ」とたしなめた。大先輩・飛田穂洲氏の「一球入魂」精神を求める。

根底に学生時代の経験がある。「鬼の連蔵」こと石井監督の血へどを吐くような指導で鍛えられた。「今の学生に通用するかは分からない」が、少なくともグラウンドでは隙のない姿勢を求める。かといって、押しつけはしない。練習から「こういう方法はどうだ?」と投げかける。加藤は「失敗しても責められません。トライして、次に成功するのが大事だと言われます」と感謝する。

前日に埼玉・久喜にある石井氏の墓に花を手向けた。ミーティングでは「選手が考えてやる野球を早慶戦までに完成させろ」とハッパをかけた。まずは勝ち点1へ「全力で東大をつぶしにいきます」と力強く締めた。【古川真弥】

 

▽早大・早川隆久投手(7回4安打1失点で勝利。小宮山監督の指導に)「ここがダメだというヒントを与えてくれます。任されれば責任が出るし、それで成功すれば自信になります」