亜大の先輩ソフトバンク松田宣に促されると、阪神高橋遥人投手(24)は照れながらも大声で叫んだ。「亜細亜大学、自主トレ!」「サイコー!」。東京・日の出町の亜大グラウンドで、プロ入り後初めて母校でOBたちによる合同自主トレに参加。よみがえってきたのは、厳しくも懐かしい思い出だった。

DeNA山崎、広島薮田…そうそうたるメンバーが次々に苦悶(くもん)の表情を浮かべた。寒さをしのぐ室内練習場。集まった13人で輪になって、松田宣の音頭で始まったのは“亜大流過酷トレ”だ。まずは屈伸10回を10セット、1周歩いて休んだら、次は腕回し10回×10セット。トレーニングとインターバルの繰り返しを約1時間みっちり行う。足首を手でつかみ低い姿勢で行進する「かえる」や「うさぎ」。「大学の時はもっとすごかった。懐かしいなと思いました」。きついメニューにあえぎながらも、高橋は充実感にあふれていた。

「苦しい時に勝つ」。今年追い求めたいテーマだ。昨年は3勝9敗。中でも最後に先発した4試合で4連敗と、チームが正念場を迎える9月にかけて粘れなかった。この日はソフトバンク東浜や広島薮田がトレーニング後にも、抜群のコントロールで投げ込む姿を見た。「後半の9月は試合の終盤で打たれたり。2人とも最多勝や最高勝率を取ってる投手なので、そういうところも違うんだなって」。東浜からは登板時は球場や相手の調子、自分との相性がすぐに頭に浮かぶと聞いて驚いた。3つ上の先輩、DeNA山崎からは「いずれ日本を背負う投手になると思う。いつか同じユニホームを着たい」とエールを送られた。

高橋は1日で亜大エキスを十分に吸い取り、先輩の姿を目標にして刺激に変えた。雪が降り積もる寒さもものともせず、ブルペンで約50球を投げ込んだ。「シーズン頑張ろうと思いました」。亜大魂を胸に、飛躍の1年にする。【磯綾乃】