崖っぷちのチームに“神風”が吹いた。日本ハム近藤健介外野手(27)が、楽天18回戦(楽天生命パーク)の4回、左翼席へ先制&決勝の3号ソロを放った。風に乗ったアーチで、引き分け以下で自力V消滅の危機だったチームを救った。2安打1四球で3度出塁。出塁率を4割8分6厘に上げ、日本記録更新も夢ではなくなってきた。

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その時“神風”が吹いた。0-0で迎えた4回1死、近藤の打席だ。カウント2-2からの5球目。楽天塩見の外角低めスライダーを逆らわず、うまくすくった。逆方向へふわりと上がった打球に、左翼手は1度、前進して足を止め、今度は慌てて背走。ゆるやかな弧を描いた打球は、左翼フェンスを越えて軽やかに弾んだ。

「風っす。感触は良かったんですけど、レフトフライかなって」。守っていた左翼手も、打たれた塩見も、ぼうぜん。「僕もびっくりしたんで、ピッチャーはもっとびっくりしたと思います」。カクテル光線に照らされて“コンちゃんスマイル”が輝いた。

8月21日楽天戦(札幌ドーム)で自打球を右ふくらはぎ付近に当て、1週間ほど欠場した。復帰後は定位置の3番だけでなく、2番や5番での起用が増加。「監督の狙いをくみ取ってプレーできるのが長所」。どの打順でも高い出塁率を維持し続け、この日も3打数2安打1四球で4打席中3度出塁。出塁率は4割8分6厘となった。

「昔はガンガンやっていた」練習の虫も、過密日程の今季は、思い切って体を休める時間を作る。「やりたいけど、疲れてしまったら次の日に良いパフォーマンスができないので、我慢しています」。セルフコントロールを身につけた背番号8が視界に捉えるのは、86年落合(ロッテ)が作った出塁率4割8分7厘のシーズン記録だ。【中島宙恵】