東北大が創部100周年のメモリアルイヤーに、99年(平11)春以来21年ぶりの3位Aクラス入りを確定させた。4勝4敗で並ぶ東北学院大との初戦で、エース右腕・中尾紘彰(4年=桐朋)が7安打完封。連打を許さない131球の力投で、大学生活最後の先発を初完封で締めくくった。「まさかこんないい投球ができるとは。後ろにいい投手がいるので最初から全力でいった。藤原(彰也捕手、4年=岩手・福岡)もいいリードをしてくれた」と無欲の勝利を強調した。

コロナ禍で春のリーグ戦が中止となり、秋も大学から出場許可が下りるか不透明な中、モチベーションを落とさなかった。4番DH桜井優宏(4年=豊中)、福岡涼投手(4年=淡路三原)ら医学部に在学する選手は、付属病院等への出入りがあるため、感染防止へのひときわ厳格な意識が求められた。7月11日から15人ずつのグループ練習が許可され、8月8日にようやく全体練習再開。全員で感染防止策を徹底しながら、出場にこぎつけた。

全体練習は水、金曜の朝6時45分からのみ。1限から授業がある選手は、8時すぎにはグラウンドを出なければいけない。それ以外は各自が空いた時間に自主練習を行う。今年はオンライン授業となり、オンデマンドで好きな時間に受講することができたため、昼間に自主練習し、夜に講義に集中する選手も多かった。宮下和輝主将(4年=群馬・中央中等)は「全体練習はなかなかできなかったけど、それぞれが工夫してきた。6つ勝ちきってAクラスに入ることを目標にしてきた」と東北福祉大、仙台大という2強をのぞく3校からの勝利を目指した。第2節の東北福祉大との初戦では0-1で惜敗も、4人の継投で王者を2安打に封じ、あわやというところまで追い詰めるなど、実力はフロックではなかった。

中尾は2年春の仙台大戦で、リーグワーストタイの1試合最多14与四死球を記録した。自主練習では、捕手不足のため、黙々とネットへの投球を繰り返しコントロールを磨いた。不名誉な記録にも決してめげなかった。努力を見てきた桜井優も「4年間で1番いいピッチングだった」とたたえた。鈴木得央監督は「どこで代えようかずっと考えていたけど、4年生の意地にかけてみようと思った。すごい成長した。やってきたことに自信があったんだと思う」と大一番での快投を必然ととらえた。

卒業後に本格的に野球を続ける者はいない。工学部の中尾は大学院に進み、エネルギーに関する環境科学の研究を続ける予定。医学部組は5年生から本格的に実習が始まる。歴史をつくった文武両道の戦士たちは、新たな目標に向かって歩みを始める。【野上伸悟】