ソフトバンク千賀滉大投手(27)が、大きな勲章を手にした。3回に通算1000奪三振をマークし、野茂英雄(近鉄)を抜いてパ・リーグ最速855回1/3での記録達成となった。CSで戦う可能性もあるロッテ相手に、8回2安打9奪三振の0封で11勝目。規定投球回に到達し、勝利数と奪三振数149はリーグトップタイ、防御率2・16は単独トップに立った。育成出身では初となる「投手3冠」獲得へ大きく前進した。

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寄せつけなかった。ソフトバンク千賀がロッテ打線をキリキリ舞いさせた。先発で8回を2安打無失点。最速157キロの剛速球と大きく落ちる「お化けフォーク」で9三振を奪い、昨年から「呪縛」とまで言われたZOZOマリンで、ロッテを103球で料理した。

千賀 久しぶりに中継ぎの気持ちじゃないですけど三振を意識してストライク先行の投球ができました。

優勝も決まり、自分との闘いを楽しんだ。あと3つと迫っていた通算1000奪三振を序盤であっさりマークした。節目は3回2死、1番荻野から145キロの変化球を空振りさせて決めた。93年にトルネード投法で席巻した野茂を超え、855回1/3での最速リーグ記録達成だ。その野茂氏とは2年前のキャンプで会ったことがある。

千賀 (野茂さんは)存在がでかすぎて見えない方。すごい優しく声をかけてくれた方でもあり、リーグのレジェンドと言われる方とひとつでも並んだことはうれしいです。

いつも以上に言葉が弾んだ。三振を取ること以上に、奪う過程を大事にする。「しっかり三振を取りにいく球なら、打者は凡打にもなります。これまで一生懸命、腕を振り続けました」。育成入団から積み重ねてきた三振数が加速度を増し、5年連続3桁奪三振を生み、パ・リーグを代表するドクターKに進化した。

育成出身では初の「投手3冠」にも大きく前進した。規定投球回に到達したこの日、防御率を2・16まで上げ、オリックス山本を抜いて単独トップに立った。奪三振も149としてトップの山本に、11勝もトップの楽天涌井に並んだ。「(山本)由伸と仲良くできて一安心です」。コロナ禍での自主練習期間は互いに連絡を取り、意識し合った間柄で、切磋琢磨(せっさたくま)のたまものだった。

工藤監督も絶賛の嵐だ。「潜在能力はあると思っていたが素晴らしい。勝つと同時に三振も取れる投手です」。対ロッテ7連勝で今日5日も勝てば今季の勝ち越しと「リーグ完全優勝」も決まる。CSで戦う可能性もあるロッテをエースが粉砕し、さらにチームは勢いづいた。【浦田由紀夫】

▼通算1000奪三振=千賀(ソフトバンク) 4日のロッテ23回戦(ZOZOマリン)の3回に荻野から空振り三振を奪って達成。プロ野球151人目で、育成入団では初めて。初奪三振は12年4月30日のロッテ6回戦(QVCマリン)で里崎から。855回1/3で達成は17年藤川(阪神)771回2/3に次いで2位のスピードとなり、パ・リーグでは93年野茂(近鉄)871回を抜いて最速。