やっちゃえ、茨城日産! コロナ禍にもめげず、動きだした新規社会人チームがある。茨城・水戸を本拠とする茨城日産だ。今月に入り、日本野球連盟(JABA)への加盟が正式に承認された。3月末から、大学新卒を中心とした25選手で始動するが、選手は社業にも力を入れる。4月の入社に先駆け、アルバイトという形で働く選手もいる。現場に潜入した。

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「いらっしゃいませ!」。スーツに身を包み、がっしりした体格から元気な声が出る。水戸千波店のショールーム。田中雄基投手(21=流通経大)野本真康捕手(22=平成国際大)は3日から働き始めた。来客の案内、お茶だし、片付けに洗車も行う。「社員の皆さんに助けていただきながら、いい雰囲気でやれています」と声をそろえた。

入社前の部員たちは地元で練習を続けるが、希望した6人がアルバイトとして既に業務開始。朝9時半から午後2時半(週末は同5時)まで働いた後、同店から徒歩数分、車の部品倉庫を改装した室内練習場で練習に励む。最速147キロ右腕の田中は「4月から野球も仕事も、すぐ活躍できるように」と早めに来た理由を明かした。カラオケ店で接客バイトの経験はあるが、車業界は初めて。「カタカナや英語の知らない用語を覚えないと」と苦笑いも、うれしそうだった。

野球メインの社会人チームも少なくないが、茨城日産は社業もきっちり行い、全体練習は週2回のみ。個別にカバーする。日産自動車でプレーし、コーチも務めた渡辺等監督(56)は「一緒に働く人たちの励みになる身近な存在でありたい」。全体練習は限られても、一体感を力に変える。

「日産」への期待は大きい。名門・日産自動車は10年から休部。茨城日産は別資本だが「日産」を冠する。創部が決まると、多くの日産OBから道具の差し入れが届いた。白、赤基調のユニホームもできた。コロナで業界がダメージを受ける中、明るいニュースとなっている。公式戦は8月の都市対抗予選からだが、オープン戦初戦は4月19日、ノーブルホームスタジアム水戸で茨城トヨペット。トヨタの胸を借りる。野球も、仕事も、やっちゃえ、茨城日産!【古川真弥】