やっと、やっと、プロ初勝利だ。“北のドクターK”日本ハムのルーキー伊藤大海投手(23)が28日、ソフトバンク5回戦(ペイペイドーム)で6回4安打無失点。デビューから5試合連続でクオリティー・スタート(6回以上、自責3以内)を達成し、待望の初白星を手にした。奪三振数は両リーグトップの41個。大学中退など苦難を乗り越えプロ入りの夢をかなえたハートは、強靱(きょうじん)だった。

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プロデビューから約1カ月。苦しみながら、ようやく待望の白星をつかんだ。5度目の先発で、プロ初勝利を挙げたドラフト1位伊藤は「ホッとしたのが一番。でも、うれしい。最後まで粘れて良かったなと思います」。両頬にトレードマークのえくぼを浮かべ、ウイニングボールを大切そうに握り締めた。

21日ロッテ戦でプロ野球新人記録に並ぶ23イニング連続奪三振をマークした“北のドクターK”が奪った三振は、たったの3つだけ。得意のスライダーの割合をぐっと減らし「落ちるボールを試しながら」と、2度目の対戦となった相手に挑んだ。自己最多の5与四球と直球の制球に苦しんだが、連打は許さなかった。

今年の正月、地元の北海道鹿部町の神社で大吉が出るまで14度もおみくじを引いたが、ほとんどが、末吉だった。勝てない時期も「『末広がり』と書いてあったので、後半に良くなっていくことを願って投げ続けています」。なかなか勝てなくても、財布に末吉のおみくじを忍ばせ「何か支えてくれるものがあれば、ちょっと気持ちが楽になる」と笑ってみせた。

駒大中退後、地元北海道の苫小牧駒大に再入学。強豪リーグから一転、地方の無名リーグからプロを目指した。駒大苫小牧の佐々木監督は「『中退という経歴は何があっても消えないんだぞ』と反対したが、意志は固かった」。再入学までの半年間、毎日のように母校のグラウンドへ通い、自分で作った練習計画をこなした。同監督は「練習内容は毎日、違って、自分を確立するために試行錯誤していた。僕より彼の方が大人だった」。エリート街道から外れても、夢を実現できることを、身をもって教えてくれた。

ウイニングボールは「母親にプレゼントしたいと思います」と、ニッコリ。「ここからが本当のスタート。これからどんどん成長して、1試合でも多くファイターズのために投げられるよう頑張りたい」。チームは5カードぶりの勝ち越しが決定。近い将来、間違いなくチームの顔となる背番号17には、早くも大投手の風格が漂っていた。【中島宙恵】

▽日本ハム栗山監督(プロ初勝利の伊藤に)「勝たせてあげられてホッとしている。練習の仕方もしっかり自分を持っていて、本当に自分1人でいろんなことを考えてやってきたんだなって。そのレベルも高い。資質としては10年くらい(プロで)やっている感じに見える」

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