和歌山大が4年ぶり2度目の全日本大学選手権出場を決めた。阪南大との雨中の代表決定戦を制し、4失点完投の瀬古創真投手(4年=水口東)らナインは歓喜の輪をつくった。8安打、5四死球と苦しんで149球を投げ抜いたエースは「苦しい場面があったが、(現チームで)初めての全国大会が決まって本当にうれしい」とかみしめた。

打線も粘った。1回に3番安田圭吾捕手(4年=駒大苫小牧)の適時打で1点を先制。2失策が絡んで逆転を許した直後の3回は、敵失と3者連続押し出しで一挙4点を奪ってひっくり返した。1点を返された直後の6回も4番橋本太郎内野手(4年=岡山城東)の適時二塁打で食い下がる相手を突き放した。

緊急事態宣言の発令を受けて和歌山大では4月25日から学生団体は活動停止に。近畿学生野球のリーグ戦も中断していたが、急きょ優勝の可能性のある4チーム(大阪市大は棄権)による代表決定トーナメント開催が決まった。大原弘監督(55)が各所との調整に奔走し、試合2日前の17日に出場が決まった。練習は個々人で続けてきたが、チームとしては前日19日の1回戦の前に軽く息を合わせただけ。“突貫工事”ながら同点の9回に2点を奪って神戸大を振り切り決勝に進んでいた。

投内連係など練習不足の中、この2勝はチームにとって特別だ。主将の安田は「3週間くらい全体練習を出来なかったが、チームをいつも信頼していた。今まで支えてくれた人に感謝の気持ちでいっぱい。先輩方にもいい報告が出来るのでうれしい」と喜んだ。自身は4年前の全日本大学選手権の姿に憧れて和歌山大に進学。一時は全国切符への挑戦すら出来ない可能性を危ぶんだが、「みんなが気持ちを切らさないように」と仲間と頻繁に連絡を取り、チームの士気を支えた。エース瀬古も「苦しい中、ここまで耐えることが出来たのはみんながいたから」と互いを思いやった。

試合後、和歌山大ナインは無観客のスタンドに向け「応援ありがとうございました!」と大きな声で一礼。チームスローガン「野球ができる喜びと感謝を力に」を伝える光景だった。そんな姿に大原監督は「選手たちがよく頑張ってくれた。選手が神宮の舞台に行くことが出来て本当に良かった」と目を細めた。

6月7日開幕の全日本大学選手権(神宮、東京ドーム)では、8日の1回戦で九産大(福岡6大学)と神宮で対戦。17年の8強を塗り替える戦いへ-。野球を出来る喜びを改めて知ったチームが一丸で向かう。【三宅ひとみ】