春季リーグ戦を終えた東京6大学野球で69年ぶりの珍事が起きた。

明大の陶山勇軌外野手(4年=常総学院)、山田陸人内野手(3年=桐光学園)の2人が打率5割で首位打者に輝いた。同一校から2人同時は、52年(昭27)秋(明大・渡辺礼次郎、岩崎亘利)以来だ。

明大は23日に最終戦となる立大2回戦を行った。試合前の時点で、陶山はリーグトップの打率5割。既に規定打席はクリアしていた。一方の山田陸も打率5割だったが、規定打席には4打席、足りていなかった。

試合前日、田中武宏監督(60)に呼ばれ、3人で話し合った。その結果、最終戦で山田陸に4打席を与えること、陶山は疲労を考慮し、最終戦はベンチスタートとすることを確認した。

山田陸からすれば、まずは4打席に立つこと。その上で、2打数1安打や4打数2安打なら、陶山と並ぶ首位打者となる。

最終戦は「2番三塁」で出場した。初回の第1打席は中飛で打率を落とす。だが、3回の第2打席で左前打を放ち、すぐに打率5割に戻した。5回の第3打席は四球で、打率5割のまま。次打席も四球なら規定クリア&打率5割キープという状況が生まれた。果たして6回の第4打席、フルカウントからボール球が来た。が、山田陸は振ってしまい、空振り三振。規定はクリアしたが、再び打率5割を下回った。

最後のチャンスが8回に訪れた。第5打席で初球を左前打。4打数2安打で打率5割とし、この日、途中出場で打席には立たなかった陶山と一緒に首位打者となった。

陶山は「2人で取りたいね、と話してたんですが、四球でも計算が狂うし、ドキドキしながら試合をやってました。ベンチでは声を出してましたが、内心、山田には2安打ぐらい、4打数2安打とか、2打数1安打にしておいてくれと思ってました」と、ちゃめっ気を交え話した。陶山からすれば、山田陸が4打数3安打や4安打の固め打ちをすれば、首位打者を取られてしまう。「最後の打席は、心の底から応援できました」と、おどけた。

山田陸も「それ(2人同時)がベストだと思ってました。絶対、陶山さんを超えちゃいけないと。2打数1安打か、4打数2安打と思って打席に入りました」と笑顔で振り返った。

願った通りの同時首位打者で、ベストナインにも仲良く一緒に選ばれた。もっとも、チームは3位で優勝を逃した。「秋は優勝が目標です」と、そろって決意を口にした。