社会人野球でトレンドになりつつある新興野球用具メーカーのグラブがある。「ごりら印の野球道具」(以下、ごりら)。昨秋の都市対抗野球では、2試合に先発して初優勝に貢献した東京ガス・高橋佑樹投手(24=慶大)が使用。「使いやすいです。同僚も使ってます」と広がりを見せている。

ごりらは20年に発足。代表を務める崔現大(さい・げんだい)さん(34)は、独立リーグでプレーした経験があり、引退後は柔道整復師として整骨院で働いた。培った知識が、グラブ作りに生きている。土台となった考え方の1つが、筋肉の連動性。「筋肉は分かれているようで、実は1つにつながっています。投げるときに筋肉が連動していないと、腕が振れなかったり、肩甲骨が思うように動かなかったり、全身に影響を及ぼすことがある」。グラブが投球動作に与える影響は、実は大きいという。

そこで手のひらに負担をかけず、リラックスした形で着用できるグラブを制作した。他のメーカーにはない特徴の1つが、捕球面の中に入るウレタン。これによりグラブがアーチ状になり、手にはめた時のフィット感が増すとともに、余計な力は入らなくなる。

愛用者の1人、東京ガスの最速153キロ右腕・益田武尚投手(23=北九州市大)は「無駄な力みがなくなる感覚があります。今までのグラブだと、投球動作の時に捕球面の部分が崩れて、余計な力が入って体が開いてしまっていました。ごりらはそれがありません」と使用感の良さを挙げた。

一般でも北は山形、南は沖縄まで25都府県のスポーツショップで取り扱いがある。崔さんは「ごりらの理念を理解して、表現してくれる職人と出会えました。ブランドとして、これが一番大きいです。一生懸命取り組む選手に対して、ポテンシャルを引き出す手助けが出来れば」。メーカー名の由来は、「ごりらを嫌いな人っていないと思うんです。それに覚えやすいんじゃないかなって」。野球界で愛されるその日まで。“ごりら”の挑戦は、始まったばかりだ。【阿部泰斉】