阪神糸原健斗内野手(29)の今季1号ソロは、無念の空砲になった。9回裏、オスナがサヨナラ右犠飛。右翼糸井の返球を一塁後方で受け取った時には、すでに遅かった。懸命のバックホームも間に合わなかった。

勝利の立役者になるはずだった。0-0の5回1死。サイスニードの高めチェンジアップを右翼席へたたき込んだ。値千金の一打で先制。昨年9月25日巨人戦(東京ドーム)以来、234日ぶりの1発だった。「塁に出ることだけを意識していたら、結果ホームランになった」。ベンチ前では緑色でライトが光る新作「虎メダル」を矢野監督から首にかけられた。ただ、この1点で勝てるほど昨季セ界王者は甘くなかった。

4月は打率1割4分7厘と苦しみ、熊谷や小幡ら若手にスタメンを譲る試合も多かった。ベンチ裏では「崖っぷちや」と漏らした日もある。5試合連続安打、2試合連続の複数安打で5月は打率3割6分4厘。底は脱した。背番号33の復調は敗戦の中での朗報だ。

プロ6年目で本塁打は節目の10本目。18年には当時の金本監督から、長打自慢の助っ人ロサリオになぞらえ、“コサリオ”と命名もされた。ツボにはまれば飛距離は出る。明大時代の主戦場、神宮ではプロ初アーチで「大学生でもあんまり打っていなかった。そういう意味ではホームランを打てて良かった」とうなずいた。

2回裏1死一、三塁では、オスナの一塁ベース後方への飛球を滑り込みながらキャッチ。すぐさま本塁へ送球し、タッチアップを許さなかった。「なかなか状態が上がらなくてチームに迷惑をかけていた。取り返せるように1試合、1試合チームに貢献できるように頑張ります」。攻守に奮闘した夜。悔しさをグッと押し殺し、帰りのバスに乗り込んだ。【中野椋】

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