阪神藤浪晋太郎投手(28)の今季初勝利はまたもお預けとなった。13日の中日戦(京セラドーム大阪)は5回までに、20年7月30日ヤクルト戦(神宮)以来となる2ケタ10三振を奪ったが、打線の援護を得られなかった。7回1失点で無念の2敗目となったが、「復活」を印象づける圧巻の奪三振ショーとなった。

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深々と頭を下げた藤浪のもとに、福原投手コーチが歩み寄った。5連敗の整列を終えた直後、静かに肩をたたかれた。

「フォームの力感、使った球種も含めて、全体的にバランスが良かった。ある程度、自分でも手応えはあります」

7回で10三振を奪い、無四死球4安打で1失点。誰もが労をねぎらいたくなる投球内容に違いなかった。

1軍先発復帰2戦目。直球の強さに変化球のキレ、制球力…すべてが高水準だった。最速160キロの真っすぐを次々と外角低めに集めた。最速153キロのスプリットで空振りを奪った。140キロ台のカットボールでカウントを整えた。

「いろんな球種をバランス良く投げ込むことができた。全体的に良いテンポで投げることができました」

1回1死から4者連続三振を奪うなど、5回終了時点で10奪三振。中日小笠原との甲子園V腕対決で1歩も引かなかった。

20年7月30日ヤクルト戦以来、744日ぶりの2ケタ奪三振。5回以上を投げた試合では15年5月2日巨人戦以来、2660日ぶりの無四死球。完璧に近い内容だった以上、わずかなほころびを悔いるしかない。

0-0の6回、1死二塁から暴投で三塁に走者を進めた直後、1番岡林にスクイズ(記録は犠打野選)を決められた。

「暴投や先頭打者への勝負球など、慎重に投げるべきだったという反省はあります」

それでも最少失点でしのいだのだから、矢野監督から「質は良かった。勝てる投球ではあった」と高評価の言葉が並ぶのも当然だ。

自身426日ぶり、先発時に限れば484日ぶりの白星は逃した。一方で、2戦連続の好投で信頼を一気に取り戻しつつある事実も疑いようがない。

「今日だけで満足せず、この投球をこれからも続けていけるように。チームに勝ちをつけられるように頑張るだけです」

大逆転Vの使者となるチャンスは、まだまだ残されている。【佐井陽介】

○…際どい判定で痛恨の2点目を献上した。1点ビハインドの8回、1死三塁で岡林の打球はゴロで前進守備の遊撃山本へ。捕球後にすかさず本塁へ送球。タイミング的にはアウトだったが、判定はセーフとなった。矢野監督はリクエストを要求したが、三塁走者の土田が捕手梅野のタッチをかわして本塁に触れたと判断された模様で、判定は覆らなかった。

▼阪神はこれで5連敗。夏の長期ロード期間中では、12年8月3日広島戦(マツダスタジアム)から同11日広島戦(京セラドーム大阪)に、1分けを挟んで7連敗して以来、10年ぶりとなった。

▼阪神の完封負けは今季21度目。球団最多である63年の24度にあと3と迫ってしまった。

▼2試合連続完封負けは今季4度目で、これは11年の4度以来11年ぶりだ。

▼藤浪がまた、今季初白星を逃した。勝利投手となっていれば、21年6月13日楽天戦での救援勝利以来。先発では、同年4月16日ヤクルト戦以来484日ぶりとなるところだった。

▼藤浪の1試合2桁奪三振は、20年7月30日ヤクルト戦10奪三振以来、2年ぶり。なお藤浪の1試合最多奪三振は13個で、過去5度ある。

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