猛打で踏みとどまった! 阪神が23日の広島戦(マツダスタジアム)を快勝。連敗を4で止め、クライマックスシリーズ進出を争う4位広島に並び、3位巨人との1・5ゲーム差を死守した。12安打7得点の猛攻を締めたのは佐藤輝明内野手(23)だ。6回に自画自賛の20号2ラン。新人から2年連続20発は左打者ではNPB初の快挙となった。残り3試合で後がない戦いは続くが、最後まであきらめない。

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確信した。すぐには歩き出さなかった。佐藤輝の打球は右翼上段席の「広島銀行」看板付近に直撃。希望をつなぐ放物線が広島の夜空にかかった。

「競った展開で次の1点が大事だと思っていた」と集中した。2点差に迫られていた6回無死二塁。フルカウントから中崎の内角144キロを強振だ。新人年から2年連続20号。NPB左打者史上初となる快挙にも、笑顔はベンチ前だけだった。

「え~…、そういう記録になったってことはうれしい気持ちもありますけど、まだまだ打ちたいなって気持ちがある」

4試合ぶり、9月2本目のアーチ。満足感に浸ることはない。矢野監督も「最低(限)の数字はクリアした」とたたえつつ、「30、40や、もっとスケールのでかい打者になれる可能性がある。来年以降は本塁打争いをするような打者になってもらいたい」。試合後にすぐさま指令を出した。

140試合目での到達。道のりは決して平たんではない。8月にはロドリゲスからバットを借りて臨んだ試合もある。助っ人いわく「芯部分が大きく率が上がるように作られているモデル」。オフにはミズノ社のバット工場で職人と意見交換するなどこだわり抜いてきた相棒を試行錯誤。なりふり構わず結果を求めた。

チーム唯一の全140試合スタメン出場。昨年は夏場に体重が微減したが今年はトレーニングなどさらに工夫を重ねコンディションを維持してきた。甲子園では早出特打が恒例。練習量を維持する一方、これまで最終組で打つことが多かった全体練習のフリー打撃はトップで打つこともある。その分、試合までに体を休める時間を作れる。メリハリをつけて進んできた。

大好きな先輩、糸井の引退試合で広島に敗れた鬱憤(うっぷん)を晴らした。「チームとしても負けられない戦いが続いているので、そういう意味ですごく、1発出て良かったです」。これで広島と並び同率4位。3位巨人には1・5差のままだが、残り3試合に勝てば逆転CSの可能性はある。

「もう全部勝って、できるだけのことはしたいと思います」。宿舎へのバスに乗り込む直前、3戦全勝宣言も飛び出した。その目はまだ、死んでいない。【中野椋】

○…阪神の4番大山がプロ6年目でキャリアハイの86打点目を記録した。初回、近本の適時打で1点を先制して迎えた1死二塁の場面。大瀬良のカットボールを捉えて中越え適時二塁打をマークした。この試合まで直近19打数2安打、打率1割5厘と苦しんでいたが、さすがの勝負強さ。「しっかり打点を挙げることが出来て良かった」と振り返った。7回には中前打を放ち、マルチ安打をマークした。

○…近本が打線に火を付けた。初回1死一塁から右中間に二塁打。スタートを切っていた一塁走者の糸原が思い切って先制のホームに飛び込んだ。「フルカウントだったのでストライクゾーンで勝負してくるだろうと思っていた。コンパクトに芯でとらえられました」。この日1安打で今季153安打。3安打の中野に並ばれたが、2年連続のタイトルへ再加速する。

○…中野が初タイトルへ猛追だ。初回に4得点の足場になる左前打。2回、9回にもHランプをともす固め打ちで、リーグトップの近本と153安打で並んだ。「自分が初回に出ることで『行けるぞ』って雰囲気にもなる。今日は初回に出塁できたのが良かった」。この4試合で8安打と好調。残り試合が多いヤクルト村上、DeNA佐野もライバルになるが、残り3試合で上積みを狙う。

○…原口が打った瞬間に分かるアーチをかけた。2点を先制した初回、カーブを捉えて左翼席上段への2号2ラン。大瀬良に大ダメージを与えた。「チカ(近本)と(大山)悠輔がいい形で走者をかえしてくれたので、楽な気持ちで入れました。甘い球を一振りでしとめられました」。8月の再昇格後は打率4割超え。勝負強さが光る5番打者は今季初の2打点だ。