大商大が3季連続優勝を果たした。勝ち点を奪った方が優勝を決める天王山。勝負を決めたのは大阪桐蔭の元主将・藪井駿之裕(しゅんのすけ)内野手(3年)だった。

「ここで自分が決めないと負けてしまうという気持ちだった。絶対やってやろうと思っていた」

1-1の膠着(こうちゃく)状態で迎えた6回の攻撃。8番打者は2死満塁から内角直球に反応した。鋭い打球が三遊間へ。三塁手がはじく強襲安打となって、1人を迎え入れた。これが決勝点になった。一塁塁上で仲間に向かって何度も右こぶしを突きつけた。

三塁の守備位置についても、声が漏れるほど泣いていた。うれしさのあまり、涙が止まらなかった。8回にも左前適時打で貴重な追加点をもたらした。

「日本一になるために大商大を選びました。大学ではしびれる試合ができています。楽しんで野球しています」

藪井は新型コロナウイルスで甲子園を奪われた世代だ。大阪桐蔭時代は投打の逸材がそろった代で、自身はレギュラーではなかった。それでも野球に取り組む姿勢を評価され、主将に任命された。秋季大会は前評判通りに大阪を制覇。近畿大会も準優勝し、翌春のセンバツ出場を確実にした。

全国制覇を目指して燃えていたが目前で甲子園を奪われた。最大の目標を失い、まとめ役としての気苦労も絶えなかった。不完全燃焼だった3年間が、今の藪井を動かしている。

「高校ではやるせなさを感じていました。その気持ちは野球でしか発散できない。高校最後の年に出し切れなかったものを今、出し切ろうと思っています。高校で学んだ勝負強さとか、絶対に負けられないという気持ちはやっぱり今につながっている。この春は苦しんで、やっと全国の切符を手にできました。目標の日本一のスタートラインにやっと立てました」

渇望した、しびれる試合を自らのバットで制した。真っ黒に日焼けした顔は生き生きとしていた。【柏原誠】