指揮者の小澤征爾さんが心不全のため、6日に都内の自宅で亡くなった。9日、所属事務所が発表した。88歳だった。

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小澤征爾さんが指をさし、手招きをした。間違いなく、スタンディングオベーションをしている自分に向いていた。

「オレ…?」。星野仙一さんは壇上に向かった。

親交のあった小澤さんのコンサートに来たら、こんなところに立っている。「おかしいな~。場違いだな~」と思いながらあいさつすると、タクトを渡され「振ってみて」と促された。

終わったばかりの演奏に昂ぶった客席が後押しする。経験はない。「ここまできたらもう、やるしかないじゃないか」。開き直って腕を振った。

「それがさ、できるんだよな。案外できる。緊張? そもそも、したことないからな。カ・イ・カ・ンってな」

今度は自分が拍手を浴びた。

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「小澤さんはすごいよなぁ。自分のコンサートで、素人に指揮をやらせるんだから」。訃報に接し、星野さんが身を乗り出して語っていた13年前の茶話会を思い出した。

孤高ではなく、ユーモアを兼ね備えた粋人。人を喜ばせる悦びに生きた者同士、髄の部分でウマが合ったのだと思う。【宮下敬至】