阪神高橋遥人投手(30)は「交流戦」と長らく無縁だった。投げたのはプロ2年目までの18年と19年だけ。交流戦の記憶ははるか遠くにかすんでいる。

翌20年が長く苦しいトンネルの始まりとなった。左手中指に力が入らなくなった。のちに尺骨を縮める大手術につながる症状なのだが、このときは原因不明だった。1軍にいるのに、キャッチボールもままならない。相手が捕れるか捕れないかという範囲に全てすっぽ抜けた。異常を察してから約2週間後、キャッチボールを撮影してもらった。

その動画は今もスマホに残している。「今でも、たまに見ます。見ると、やっぱり異常があったんだなあと思いますね」。場面は甲子園の室内。厳しい顔で、すっぽ抜けを投げる自分がそこにいる。精密機械のような制球力、球のキレ味をを誇る今の姿からは想像しがたいが、これも高橋の重要な歴史の一部だ。

21年以降、左手首のほかトミー・ジョン手術も含め計5回も左腕にメスが入った。リハビリの連続で、投げた年はすべて、交流戦が終わったシーズン中盤からの稼働。高橋は「交流戦とか関係なく、めっちゃうれしいです」と素直にこの日の勝利を喜んだ。キャリアを振り返ったときに、特別な意味を持つ1勝と思えるのかもしれない。【柏原誠】

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