西武中村剛也内野手(42)は打てなかった。ロッカールームへと続く長い階段を、1段1段丁寧に足を上げる。「打てなかったことに対して悔しいし、負けたことに対して悔しいし」。追う報道陣のあまたの靴音にかき消されないほど、悔しさを表現する言葉1つ1つが大粒だ。
6時間前、階段を一段飛ばしで上がっていった。「いや、特に。頑張ります」。言葉少なでロッカールームへ向かった。プロ25年目のシーズンで、今季初めての1軍。当然、集中力を最大限に高めたい。栗山巧外野手(42)の準備力の高さはよく知られるところながら、通算481本塁打のスラッガーだって、同じようにもちろん。
試合前、西口文也監督(53)はベンチに座り、中村剛の打撃練習を見つめながら言った。「対策は立てているけど、現状でバッターがなかなか手出しをできていない。そういう空気を変えてほしいよね」と、苦しい時期に大ベテランを1軍に呼んだ。結果は4打数無安打2三振。「まだ1試合じゃ判断できないので」と指揮官は話す。
あと40試合少々で今季は終わる。そんな頃合いでの“おかわり君”の初登場、スタンドはわきにわいた。応援歌もフレーズ1つ1つが明瞭にネット裏に届く。当然、打席にだって。
「そうですね…今度はしっかり結果出せるように。あの声援に応えられるように頑張ります」
明るくはない。でも通路に響く声は、沈んでもいない。【金子真仁】



