DeNAは23日、ベテラン戸柱恭孝捕手(36)のサヨナラ本塁打で延長12回、4時間18分に及んだ激闘を制した。戸柱とはどんな男なのか。三つのキーワードからひもといていく。
(1)無私 ライバル捕手の台頭を進んで促す。今季、正捕手となった4年目の松尾汐恩とは、自主トレをともにする。プロ11年目だが、経験を惜しみなく伝授した。現在は捕手2人制。最近になって頭角を現してきた古市尊にも、アドバイスを送る。
「一番は、チームが勝つためにチーム一丸になってやるので。今は尊が本当に頑張ってますし、何かあれば共有はしてます。今2人しかいないんですけど、なんとか2人で頑張って。彼も頑張ってるので、やっぱり僕も頑張らないといけないなという思いがあります。一番はやっぱりチームが勝てて良かったなと思いますね」。
プロ野球選手は個人事業主でありながら、勝利や優勝を目指すにはチームスポーツの一員という意識も必要だ。戸柱の心のバランスは、明らかに後者に置かれている。
(2)準備 戸柱が最も大事にしていることだ。「準備することはプロとしてやっぱり大切なことだと思う。1軍にいて試合に出るのは責任があるので、準備をしっかりして。結果は後からついてくるもの。そこは心がけてます」。
「準備」とは具体的には何を行っているのか。たとえ試合に出ていない場合でも、帰宅後、ベイスターズ投手陣が投げた全投球の配球チャートを見ながら、映像を1球1球確認している。もちろん、12回をフル出場し、疲労がたまった試合を終えた後でも。しかも、プロに入ってから、ずっと続けている。「毎日欠かさずやることがキャッチャーは必要かなと。次につながることが大切」。直近11年分のDeNAの全投球を見ていることが、リードのバックボーンとなっている。
(3)ちゃめっ気 「ハマの金剛力士像」の異名を持つなど、一見すると近寄りがたいこわもての持ち主だ。だが、話してみると実に気さくで明るい人柄。ヒーローインタビューや試合後の取材でも報道陣を笑わせようとする。
ヒーローインタビューでは、中日の剛腕クローザー松山からの1発に、自虐ネタを披露した。「自分が一番びっくりしています。勝ったのが一番ほっとしています。(松山は)好投手過ぎるので、ボールになってくれと思って打席に立っていた」。四球を願っていたような口ぶりだった。
6回には、失点に直結する二塁への悪送球があった。「かっちゃん(二塁カバーに入った中堅手の勝又温史外野手)がワンタッチしてくれたので、なんとか最少失点で収まった。明後日からですね、僕は基本のキャッチボールをしっかりやりたいなと思います」と、小学生のような反省を口にして笑いを取った。
試合後には、囲んだ報道陣をほっこりさせた。松山からのサヨナラアーチに「自分が一番びっくりした」とした後に、今季1号だけに「多分、僕以上に皆さんがびっくりしたと思う」。続けて「笑うところですよ」と、硬かった場の雰囲気を和ませた。ひとしきり真面目な話を終えると、取材の最後には「ちゃんとしゃべれました? 久しぶりだから緊張しちゃいました」と記者に確認。こわもてに似合わないセリフで締めていた。【斎藤直樹】



