<日本ハム0-5楽天>◇23日◇札幌ドーム

 「ガムシャラに投げられたのが良かったです」。楽天宮川将投手(22)はルーキーらしい、あどけない笑顔で言った。プロ初先発。5回まで無安打投球だった。6回1死一塁、陽岱鋼に右前打を食らった。その瞬間、顔に感情は出ない。「無安打という意識はなかった」から。2死一、三塁となって3番西川を中飛に打ち取る。唯一のピンチをしのいでも、ポンとグラブをたたくだけ。打者だけに集中していた。

 緊張の初先発だった。20日に札幌に着くや「不安が大きかった」と重圧に襲われた。秋の味覚満載の札幌だが「緊張で部屋に引きこもってました。2、3日、テレビも見てません」。前夜も緊張で眠れない。朝食も口にできなかった。顔面蒼白(そうはく)な宮川を見て、試合前の星野監督は「あいつ、一睡もしてないぞ。ええやないか」と、初々しさを楽しんでいた。

 ナインのサポートが温かい。一塁のジョーンズは、何度もマウンドに来て「低めに投げろ」と激励した。試合前夜は小山伸が「緊張するのはしょうがない。普段通りに投げればいいんだ」と、気持ちを落ち着かせてくれた。チームの一体感に後押しされた好投だった。

 目標の投手を聞かれれば「上原さんです」と即答する。大体大の先輩、レッドソックスの守護神だ。宮川は大学時代、オリックス松葉の控えに甘んじ、ドラフトも育成枠から成り上がった。「雑草魂」の系譜を歩む男が、7回1安打無失点でマジックを「3」にした。「マジックがついている中で投げさせていただけることは幸せです」。星野チルドレンがまた1人、才能を開花させようとしている。【金子航】

 ◆宮川将(みやがわ・しょう)1990年(平2)10月19日生まれ。大阪・泉南市出身。大体大浪商-大体大。大学では松葉(オリックス)と2本柱として活躍。昨年育成ドラフト1位で入団し、2軍戦で3勝0敗の結果を残して6月2日に支配下選手登録された。最速147キロの直球とスライダー、フォークが武器。184センチ、87キロ。右投げ右打ち。