<パCSファイナルステージ:楽天2-0ロッテ>◇第1戦◇17日◇Kスタ宮城

 やっぱり、頼れるエースだ。楽天田中将大投手(24)がロッテとのCSファイナルステージ初戦で、7安打完封勝利を挙げた。第1ストライクから積極的に振る相手打線に対し、早いカウントから変化球を選択。三塁を踏ませず、成瀬との投手戦を制した。無傷の24連勝で締めくくったレギュラーシーズンに続いてすごみを見せた。楽天はアドバンテージの1勝を含めて2勝目。26日開幕の日本シリーズ進出へ、絶好のスタートを切った。

 最後の最後に“今日イチ”の球がいった。2-0の9回2死走者なし。Kスタ宮城史上最多2万4332人が見守る中、田中コールが湧き起こる。田中はロッテ鈴木を2球で追い込み、ファウルを挟んでの4球目。内角に151キロをズバッと決めた。見逃し三振。マウンドで半回転すると、力いっぱい、右の拳を握りしめた。「よっしゃと思いました。最後に一番良い球がいったと思います。尻上がりでしたね」と、会心の120球完封勝利を喜んだ。

 CSの熱気にも、動じなかった。球団史上初めて本拠地でのファイナルステージ。大入りで、1アウトごとに地鳴りのような拍手と歓声。だが、シーズンとの違いを聞かれても、田中は「そんなになかった」と落ち着いていた。1、2回と一、二塁を招いたが、後続を断ち、3回は3者凡退。勝ち上がってきた敵の勢いを砕いた。ロッテ先発の成瀬も1点もやらない展開だったが、「良い緊張感でできる喜びを感じました」。重圧よりも、むしろ、心地よかった。

 そう感じられたのも、準備のたまものだ。早打ちのロッテ打線に対し、ミーティングで対策を確認。初球から変化球を多めに選択した。スライダー、スプリット、カーブの3球種が、打者全34人中20人。バッテリーの息はピッタリだった。田中は「CSだから、ロッテ打線だから、ではない。ああいう風に打ってくる打線に対して、いつもやっていること。個々の打者に対してもです」と当然のように言った。狙い通りに封じ込んだ。

 準備は、前回登板直後から始めていた。8日に24勝目を挙げ、中8日での登板。いつもより間隔が空いたが、難しさは「全然なかった」。工夫をした。12日の練習では、利き手とは逆の左手でキャッチボール。器用に30メートルほど投げ続けた。「遊びですよ、遊び」とはぐらかしたが、トレーニング担当の星コーチは「登板後は右の肩甲骨が前にずれる。左手で投げることで、バランスを戻す」と説明。翌日13日には「傾斜のあるところで投げたい」と、ブルペンでキャッチボールを行った。自ら、普段とは違うメニューを次々と取り入れ、大事な舞台に備えた。

 お立ち台には、先制ソロの銀次と上がった。先輩の1発の感想を聞かれ「じぇじぇじぇ!!」と、おどけてみせたが、本音は違う。「選手全員で2-0の完封。明日につながります」とチーム一丸を強調。今後の展開次第で「投げる準備はしていきたい」と、スクランブル登板の覚悟も口にした。頼れるエースが、チームに勢いをつけた。【古川真弥】

 ▼田中がCS初の完封勝ち。これで田中は09年1S<2>戦、同年2S<3>戦に次いで登板した3試合がすべて完投勝ち。3失点は失策、ソロ本塁打、犠飛でCSでは、まだ適時安打を許していない。プレーオフ、CSで初登板からの連勝はダルビッシュ(日本ハム)と吉見(中日)の5連勝があるが、初登板から3試合連続完投勝ちは田中が初。日本シリーズを含めてもポストシーズンで初登板から3試合連続完投勝ちは51、52年藤本英(巨人)81、83年西本(巨人=4試合連続)に次いで3人目。田中は公式戦と合わせて「25勝0敗」。公式戦15勝0敗だった81年間柴(日本ハム)はプレーオフでは○も、日本シリーズは●●だったが、田中の無敗はどこまで続くか。