DDTプロレスリンググループが17年から提供する動画配信サービス「DDT UNIVERSE」が5月12日、「WRESTLE UNIVERSE(レッスルユニバース)」(https://www.ddtpro.com/universe)に名称変更した。また、1月から同じくサイバーエージェントグループとなったプロレスリング・ノアの動画も見られるようになった。DDT、ノア両団体の高木三四郎社長(50)に、サービス改称の理由と今後の動画ビジネスについて話を聞いた。【取材・構成=高場泉穂】

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-まず名称を変えた理由を教えてください

このサービスでは、DDTだけでなく、ノア、DDTグループ団体の東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレスなどさまざまな団体の試合が見られます。ただ、それぞれのファンにとって「DDT」という名前が入っていると、入りづらい部分がある。「DDT」ではなく「WRESTLE」とすることで、多くのファンの方に抵抗なく見ていただけると思い、変更しました。

-変わった点は

新型コロナウイルスの影響で、ノアは3月末から無観客試合を行い動画を配信していますが、それによって圧倒的に視聴者数が増えました。3月から4月にかけて、それまでの視聴者数の30%増となりました。大きく伸びたきっかけは3月29日のGHCヘビー級選手権、潮崎豪対藤田和之戦です。(王者潮崎と挑戦者の藤田が試合開始から約30分間、無接触でにらみ合いを展開。その後、壮絶な戦いとなり57分47秒で潮崎が勝利)。あれでめちゃくちゃ伸びたんです。プロレス史における事件や名勝負、ビッグマッチはやっぱり見られるということがあらためて分かりました。

-ノアはこれまで動画配信サービスを持っていませんでした。DDTと別に作ることは考えませんでしたか

ノアの過去の動画はほとんど日本テレビが持っていて、会社に資産として残っていないんです。今後資産を残していくうえで、提携のアベマTVで全部の試合を中継するのは難しい。それで、「ユニバース」で配信することになりました。別にゼロから作るとなると、お金も時間もかかる。「ユニバース」の形は、まだまだ十分ではないと思っていますが、そのまだまだの形に持ってくるまでに3年ぐらいかかっています。だったら今あるものにくっつけた方がいいと考えました。この資産というのが、大事なんです。DDTは97年の旗揚げから現在までの映像をほとんど持っているんですよ。一時期、他の媒体で配信してもらっていましたが、後にその権利を全部買い取りました。いまだに飯伏幸太(元DDTで現在新日本プロレス所属)の路上プロレスの動画を貸してほしいとテレビ局に依頼されることが多いです。コンテンツビジネスをやっていくのであれば、動画、選手の肖像権は資産になり、今後より大事になってくる。ノアの過去の動画を買い取るのは現段階では難しいので、ゼロから資産を構築していきます。

-プロレス界の動画サービスビジネスについて考えをお聞かせください

僕たちが始めたのは17年からですが、もうちょっと早くやっていれば…という思いはあります。WWEが14年に「WWEネットワーク」を始めた時、すぐにこれからの時代はこの定額サービスがスタンダードになると思いました。その他にも、モノ自体が売れなくなってきている、というのを他業界から学んでいたので、これは絶対プロレスを動画で見る時代がくるな、と。分かってはいたんですけど、当時は開発費用に3、4000万かかり、すぐに取りかかるのは無理でした。すぐ後に新日本プロレスもテレビ朝日と共同で「新日本プロレスワールド」を始めました。誰の目にも明らかなんですけど、WWEと新日本が大きく伸びたのは、その独自の動画配信サービスを持ったからです。今新しくテレビを買うと、配信系のデータがあらかじめ入っている。そこに新日本ワールドは入っているんですよね。そこは企業努力だし、すごいなと思います。

-レッスルユニバースの強み、独自性とは

間違いなく強い部分が一つある。とにかくいろんなプロレスを見られることです。ノアのような正統派から、DDTのエンタメ系、そして女子プロレス。現在は7500本の動画を提供していますが、さらに数を増やし、コンテンツの幅も広げていきたいと思っています。その中で、人気なども考慮し、内容を取捨選択していく予定です。

-今後の課題や目標は

新日本さんが約10万人の視聴者を持っているといわれている。最低でもその半分には、来年中にいきたいですね。海外の視聴者を獲得するためにも、英語サービスは大きな課題の1つ。今も一部の動画には英語実況をつけていますが、もっと充実させていきたいです。今までのデータで分かっていることですが、やはり見られるのは、試合なんですよね。いい試合を届けることが1番なんです。扱う団体が増えれば、扱う動画の本数も増えるので、その精査もしないといけないと思っています。現在、映像スタッフは常駐6人に外注3人。緊急事態宣言前から明けるまで、一番忙しかったのは彼ら映像班です。今後その人数は増やしたいです。いつでも募集しています!