無観客での本場所は、引退して間もない親方にも影響を与えている。元関脇安美錦の安治川親方(41)は、10月4日に断髪式などを含む引退相撲(両国国技館)を控えている。本来なら、春場所の観客にチラシを配るなどの宣伝を考えていた。「PRできなかったのは残念。でも、誰が悪いわけでもないから…」。

新型コロナウイルス感染を予防するため、日本相撲協会は協会員への不要不急の外出を控えるように通達している。夜の街には繰り出せない。安治川親方は「チラシ1つ渡せない。新地には1日も行ってないよ」と歯切れが悪い。打ち出し後は自室にこもり、宣伝資料を作ったり、電話やメールで営業する毎日だ。

元安美錦のような人気力士ですら、引退相撲は本人が主体となって集客に努める。協会は個人のSNSを禁じているが、こういうPRは了承している。安治川親方もツイッターを始めたが、協会全体が自粛ムードの中、遠慮がちになってしまうという。

「まずは地道にやっていくしかない。本場所に来られなかった人のために、協会も若手の親方もいろいろやっているから」。我慢の本場所を乗り切るまで、あと3日だ。【佐々木一郎】

引退相撲の詳細は、以下のウェブサイトを参照ください。http://aminishiki.jp/