東前頭4枚目の王鵬(24=大嶽)が支度部屋入り口近くに腰かけた。わずか数メートル隣には大の里が報道陣約20人に囲まれていた。王鵬には半数以下。それでも発した言葉には、角界を背負う覚悟が詰まっていた。
結びの一番で大関霧島を破った。勝ち名乗りを受け、紫色のさがりと、1本手取り3万円の懸賞金39本の束を右手で抱えるように花道へ。結びで勝って分厚い懸賞金を抱えた感覚は-。問われて即答した。
「夢のある仕事だと思います。すごいですよね。一番に勝ったことで、これだけのお金が頂ける。次の世代まで続いていけるように盛り上げていかないと」
コロナ禍で無観客も経験した。ファンやスポンサーの力も実感した。昨年秋場所には1場所の懸賞金が2325本で過去最多。今場所も申し込み時点で2254本。先場所は尊富士が新入幕優勝を果たすなど同世代の切磋琢磨(せっさたくま)が角界の繁栄にもつながると信じている。7日目は再び結びの土俵に上がる。相手は高校時代からの宿敵で、18年初場所初土俵の同期生、大関豊昇龍。大鵬の孫と朝青龍のおいの決戦。懸賞は48本だ。
「同期の2人が結びでとるなんて、めったにないこと。本当は自分がもっと番付を上げていかないといけないのですが。勝敗以上に、場所を盛り上げる一番にしないといけない」
約10年前の14年1月19日、「大鵬一周忌」で墓前で「おじいちゃんみたいな強いお相撲さんになります」と手を合わせた13歳の王鵬。当時、間近で取材させていただいた少年の成長した言動に胸が熱くなった。【鎌田直秀】


