力士はまげを結うが、毛量が多すぎる場合は、少し問題が起きる。髪を束ねて元結(専用の白いヒモ)縛る際、まげが太すぎて床山が片手で握れなくなる。すると、しっかりしばれなくなるため、特に大銀杏(おおいちょう)を結う際、形が崩れる。これを防ぐための策が「中剃り」だ。

中剃りとは、頭頂部の髪をバリカンで刈ること。古くカミソリで剃っていた。こうして毛量を調整すると、きれいな大銀杏ができる。

現在の関取衆では、霧島、朝紅龍、荒篤山らが中剃りをしている。霧島を新弟子のころから知る一等床山の床大は「幕下のころから中剃りをしています。太すぎで結えなかったから。毎場所、(初日前日の)土曜日に剃る。でも最近は緩くなってきたから、中剃りの量を減らし始めています」と話した。一般的に、加齢とともに毛量は減る。それに合わせて、中剃りも調整していく。

かつては高安もしていた。一等床山の床鳴は「今はやっていない。毛量が少なくなってきたから、31、32歳のころにやめた」と語る。高安の兄弟子、西岩親方(元関脇若の里)は「39歳で引退するまで中剃りしていました。昔は、結構いましたよ」と話す。

荒篤山は「髪を洗うのがめっちゃ楽です」と、中剃りを前向きにとらえている。荒汐部屋の一等床山・床仁は「中剃りをする力士がいる部屋の床山はバリカンを持っています。中剃りをすると、(大銀杏が)決まるけど、今は嫌がる力士が多い」と指摘する。

中剃りは頭頂部を刈るため、まげを結っていない時の見た目は、カッパのようになってしまう。激しい稽古をして、元結が外れることもある。事情を知らない人が見ていると、驚かれてしまう。

二等床山の床旭美は「今の若い力士は『恥ずかしいので嫌です』と言う。そう言われるとこちらも強く言えない。今は無理やりはやらない。時代っすね」と苦笑い。床鳴も「『中剃りしてみる?』と聞いて、『いやあ…』みたいな反応の時はやりません」と慎重だ。

こういうところも、令和ならではの対応に変わってきている。

中剃りに関連する、いい話もある。断髪式の際、髪が薄くなってきれいに大銀杏を結えなくなってしまった元関取がいた。床山が機転を利かせて、元関取の付け人に声をかけた。付け人が中剃りをして、刈った髪を元関取の付け毛にする。「お世話になった人のマゲと一体化する。いいだろう?」と口説かれて賛同した。

断髪式当日、付け人の協力を得て、しっかりした大銀杏が出来上がったという。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

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まげを直してもらう霧島(2025年7月19日撮影)
まげを直してもらう霧島(2025年7月19日撮影)