ボクシングのWBOアジアパシフィックフェザー級王者森武蔵(20=薬師寺)が6日、故郷(熊本県菊池市出身)の熊本県庁を訪れ、マスク3000枚を寄贈した。

4月18日に熊本で防衛戦が予定されていた森は、3月に地元で合宿中に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、「何か力になれないか」。元WBC世界バンタム級王者の薬師寺保栄会長や後援会の会長に相談し、自身のファイトマネーで寄贈を決めた。4月の試合は延期。「今はボクシング一本でやらせてもらっている。ファイトマネーが入らないのは正直厳しいが、何かの役に立ちたかった」と話す。

自身も苦しい思いをしてきたからこそ、人のためになりたいと思う。13歳の時、ロードワーク中に後ろから車に追突された。腰と両足骨折の重傷。半年間、入退院を繰り返した。医者からは通常の生活はできても、ボクシングは無理と通告された。再起不能の宣告だったが、森は「自分の心は折れなかった」。必死の努力で全国U-15ジュニアボクシング大会で優勝した。

そんな姿勢が元世界王者の薬師寺会長の目に留まった。母は高校進学を願ったが、森は「プロ以外に興味ない」と薬師寺会長の名古屋行きを即断した。中学の卒業式に薬師寺会長が迎えにきたという。その後に大阪で世界ランカーとのスパーリングでボコボコにされた。「やり返したる」。逆に闘争心がわいた。

サウスポーのファイターで、プロでは全日本スーパーフェザー級新人王を獲得するなど11戦全勝(6KO)。現在、WBO世界フェザー級5位で、世界挑戦も期待される。「自分は若く、まだまだ成長期。力を備えて挑みたい」。与えられた困難を乗り越え、世界のベルトを目指す。