元東洋太平洋ライト級王者でWBO同級5位の中谷正義(32=帝拳)が無念の9回TKO負けを喫した。

元3団体統一同級王者ワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)とのライト級12回戦に臨み、レフェリーストップで9回1分48秒、TKOで敗れた。5回にクリンチをすり抜けられ、右フックでダウンを喫し、9回には何度も左ストレートを浴びて腰を落としたところで試合を止められた。「1番のビッグマッチ。勝たないと意味がないので絶対に勝ちます」と臨んだ大一番だった。

世界が注目した1戦だった。昨年10月、現3団体統一同級王者テオフィモ・ロペス(米国)に判定負け後もロマチェンコの注目度、高い評価は変わっていない。米老舗専門誌ザ・リングのパウンド・フォー・パウンド(階級超越の最強ランク)で9位。世界ランクもWBC1位、WBA2位、WBO2位、IBF5位。戦績17戦中、この中谷戦がノンタイトル2戦目。常に世界戦の舞台にいる最高峰ボクサーに挑んだ中谷だったが、突破できなかった。

昨年12月、米ラスベガスで臨んだジム移籍初戦で、中谷は印象的な逆転勝利を収めた。スター候補だった世界ランカーのフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)に1回、4回にダウンを喫したものの、9回に左ジャブでダウンを奪い返し、ワンツーで沈めて同回TKO勝利。WBO5位を筆頭に世界主要4団体で10位以内に入り、世界王座への挑戦に近づいた。中谷は「全然、満足していません。やっぱり目標にしてきた世界チャンピオンになりたいので」と貪欲な姿勢。このロマチェンコ戦は、その目標が近づく最大の関門だった。

東洋太平洋王座を11度防衛し、19年7月、現3団体統一同級王者テオフィモ・ロペス(米国)にIBF世界同級王座挑戦者決定戦で惜敗。プロ初黒星を喫し、1度は現役を引退した。「プロになったときに『1回負けたらやめる』と決めたんです。でも、やめた後大学の先輩が(元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者)石田順裕さんと食事する機会をつくってくれ、そこで石田さんの話を聞いて『もう1回挑戦してもいいかな』と」。再び世界王者の目標を胸にカムバックを果たしていた。

◆中谷正義(なかたに・まさよし)1989年(平元)3月8日、大阪市生まれ。小学3年から空手、中学3年時にアポロジムでボクシングを始める。並行して日本拳法も学ぶ。大阪・興国高では、世界4階級王者井岡一翔らと同期。3年時に高校総体ライト級8強。近大を経て、11年6月、井岡ジムからプロデビュー。14年1月、東洋太平洋ライト級王座を獲得し11度防衛。19年7月、現3団体統一同級王者テオフィモ・ロペスに判定負けし、1度引退を表明。昨年12月に現役復帰し、帝拳ジム移籍。身長182センチの右ボクサーファイター。