新日本プロレスでIWGPジュニアヘビー級王者として活躍したプリンス・デヴィットことWWEのフィン・ベイラー(40)が今年初めて王座戦で「悪魔の王」と化す。

26日(日本時間27日)、米コロンバスで開催されるPPVエクストリーム・ルールズ大会でWWEユニバーサル王者ローマン・レインズ(36)に挑戦。顔と上半身に恐ろしいペイントを施した怪奇系デーモン・キング仕様で挑む。第13回の「WWEの世界」は、大舞台で圧倒的な強さをみせるベイラーの悪魔スタイルにスポットを当てる。

   ◇   ◇   ◇

ベイラーのデーモン・キングはひと味誓う。武藤敬司によるグレート・ムタは化身。WWEでもミックフォーリーのマンカインドは多重人格の1つで、ブレイ・ワイアットのザ・フィーンド(悪霊)は憑依(ひょうい)とされる。レスラーとして別人格に扱われるが、デーモン・キングはベイラーと同一人物として認識される珍しいタイプの怪奇系レスラーだ。

ベイラーによると、デーモンは通常、深層心理の深いところに隠れているものの「臨界点を超えたところで現れる精神状態」と表現する。いつもは正義感あふれるレスラーとして振る舞っているが「暗い部分(ヒール)を引き出さなくてはいけない時がある」。怒り、憎しみ、恨み、リベンジ魂など“負”の部分のボルテージが頂点に達した時の姿なのだという。化身や別人格ではないため、入場曲も同じ、リングネームもベイラーとして紹介される。

デーモン・キングとWWEユニバーサル王座は浅からぬ縁がある。16年8月、真夏の祭典PPVサマースラム大会でセス・ロリンズとの王座決定戦で、ベイラーはデーモン・キングとして臨んで勝利、初代王者となった。しかし試合途中に右肩脱臼していたことが判明。翌日にベルトを返上した経緯がある。デーモン・キングとして同王座返り咲きを狙うことには大きな意味がある。

以後、17年8月サマースラム大会のブレイ・ワイアット戦、18年8月のサマースラム大会のバロン・コービン戦、そして19年4月のレッスルマニア35大会でインターコンチネンタル王者ボビー・ラシュリー挑戦時もデーモン仕様で出場し、すべて勝利。PPV大会での勝率は高い。

新日本時代、ヒールユニット「バレットクラブ」のボスとして活動していた時から大一番で怪奇系のボディーペイントでファンを驚かせ、WWEのNXTでデーモン・キングというスタイルにまで“昇華”させた。9月10日(日本時間11日)のスマックダウン大会で、ベイラーはデーモン・キングとして同王者レインズとリングで対峙(たいじ)した。「悪魔にでもなる。レインズはエクストリーム・ルールズでユニバーサル王者となったデーモンの顔を見ることになるだろう」と予告した。さらなる覚醒が期待されるデーモン・キングで、ベイラーが最高位王座に返り咲くことができるか。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)