IBF世界スーパーフェザー級王者尾川堅一(34=帝拳)が完全アウェーで初防衛に失敗した。地元カーディフ出身の同級3位ジョー・コルディナ(30=英国)とのV1戦に臨み、2回1分15秒、KO負けを喫した。右ストレートをあごに受けてダウン。そのまま大の字に倒れ、再び立ち上がることができなかった。過去、英国では日本人の英国人相手の世界戦は過去5戦全敗。尾川もジンクスを打破できなかった。元WBA、WBC世界ミニマム級王者大橋秀行氏(57=大橋ジム会長)が尾川による敵地での初防衛戦を解説した。

◇  ◇  ◇  ◇

いつもの尾川なら決してもらわないような右を被弾してしまったと感じる。挑戦者コルディナが上半身を下げ、ボディー打ちを狙うフェイントをみせてからの右ストレートを浴びてダウンを喫した。普段なら見極められるはずのフェイント。予測していないパンチをもらった形で、キャンバスに後頭部を当てた影響もあっただろう。立ち上がることはできなかった。1回の試合内容が良かっただけに惜しまれる。

入場から尾川は心身ともに充実し、リラックスしていたように見えた。1回に軽い左ジャブはもらったものの、左フックをあごに効かせ、ロープ際に追い込み、ガードの上からパンチを当て手数もあった。私の採点では1回は尾川がポイントを奪っていたと思う。対する挑戦者コルディナの方が硬くなっていた。サッカーの応援のような英国独特の歓声やムードを全身に受け、重圧を感じていたと思う。表情も少し弱気に見えた。

1回の3分間で相手との距離感などを把握し、尾川も「いける」と自信を持っただろう。私も一気にペースをつかみ、KOできるのではないかと予想していた。しかし、その「いける」という気持ちが、2回の尾川の硬さにつながったのかもしれない。ボクシングはメンタルのスポーツと言われる。この一戦はまさにそれを感じさせた。

昨年11月、コロナ禍なども経て苦節4年で念願の世界王座を獲得した尾川は逆境の強さ、海外マッチでのメンタル的なたくましさをみせてきた。初防衛戦の試合時間は計4分少しの決着だった。良いコンディションでリングに入った尾川本人にとっては悔いが残る一戦になったはずだ。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者、大橋ボクシングジム会長)