WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が日本人初の3団体統一に成功した。

WBC世界同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)と3本のベルトを懸けて拳を交え、2回1分24秒、TKO勝ち。19年11月、階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝以来、約2年7カ月ぶりの再戦を制した。

「やりました。なつかしい。2年7カ月前、ドネアと戦って以来の熱気。みなさんありがとうございました。最後の右ストレートはあまり感触なかったですが、映像をみたらかなりきくパンチだと、やってきた練習は間違いなかった」

入場から井上ワールドだった。リング上にギタリスト布袋寅泰が登場。豪華な生演奏の中、満員の大観衆の声援を受けながら井上は入場した。研ぎ澄まされた表情で、布袋とグータッチ。完全にスイッチは入っていた。

1回のゴングが鳴る。冷静にドネアの様子を見ながら勝機をうかがう。1発のジャブだけで、歓声が沸く。終了間際、右ストレートでダウンを奪う。一気に流れをつかむ。2回に入ると左フックでドネアをぐらつかせると、連打の猛攻で2度目のダウンを奪うと、レフェリーが試合を止めた。わずか264秒のKO劇だった。

日本人では井上を含め、ミニマム級で井岡一翔、高山勝成、ライトフライ級で田口良一の計4人が2団体統一に成功してきたが、3団体統一は初の快挙となる。

WBSS優勝後の20年4月、当時のWBO世界同級王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)との3団体王座統一戦が発表されながらもコロナ禍で中止となった。同年10月にボクシングの聖地、米ラスベガスに初進出。2戦連続で聖地で戦い、昨年12月には約2年1カ月ぶりの凱旋(がいせん)試合となる国内防衛戦も実現した。防衛戦に向けた準備に一切の手抜きはしていないが、井上は「防衛戦を続けていくモチベーション、難しさ。統一戦というレベルの試合が毎試合あるわけではない。その難しさを感じている」との“心の渇き”を口にすることもあった。

今回は希望通りの統一戦。WBC王者となった世界5階級制覇王者ドネアとの再戦、そして日本人初の3団体王座統一という大きなテーマがあった。「自らモチベーションを上げているわけではない。自然に気持ちが上がっていますね」。アマチュア時代から技術的にも参考にしてきたドネアに対し「自分との戦いが最後に、しっかり花道をつくれれば」と引導を渡す気持ちが胸にあった。

レジェンドとの再戦をクリアし、日本人初の3団体統一王者にたどり着いた。次は年内で対戦可能ならWBO世界同級王者ポール・バトラー(英国)との4団体統一戦に照準を合わせる。バトラー戦が年内実現しないなら「スーパーバンタム級で戦いたい」と1つ上の階級で世界の頂点を目指す考えを示した。世界でも8人しか成し遂げておらず、バンタム級では史上初となる4団体統一。その偉業を目指し、モンスターが突き進む。

 

▽ラウンドVTR

【1R】井上は布袋寅泰のリング上での生演奏というド派手演出で先に入場。ドネアは落ち着いた表情でリングインした。 ドネアがいきなり左フックをふるう。井上は距離をとり、冷静にジャブを放ちながら間合いをはかる。終盤に井上の左ストレートから激しい打ち合い。右ストレートでダウンを奪った。(井上10-8)

【2R】井上の左フックにドネアがグラつく。ロープに詰めた井上がさらに猛攻。よろめいたところに連打でとどめは左フックでドネアから再びダウン。レフェリーが試合を止めた。 圧倒的な2回1分24秒TKO勝ち。日本選手初の3団体統一を果たした。

※採点は日刊スポーツ

 

◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾さんの影響で小学1年から競技を開始。相模原青陵高時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。国内最速(当時)6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。19年5月にWBA、IBF世界バンタム級王者に。同年11月、WBSSバンタム級優勝。家族は夫人と1男2女。身長164・5センチの右ボクサーファイター。

 

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